映画【FURY/フューリー】感想(ネタバレ):戦車の中の人間ドラマと圧巻の戦闘描写が光るリアル戦争映画

fury
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●こんなお話

 第二次大戦のドイツで戦車に乗って戦う男たちの話。

●感想

 戦車そのものを主役に据えた映画というのはあまり多く見たことなかったので、それだけで新鮮でした。操縦の仕方、大砲の撃ち方、戦闘中の乗員たちの動きまでをじっくりと映し出していて、それを見ているだけでも十分に面白かったです。戦車の内部構造や戦闘時のチームプレイが丁寧に描かれていて、戦車という兵器そのものに興味が湧いてくる作品でした。

 中盤に登場するドイツ軍との戦車戦も迫力が凄かったです。砲撃、装填、照準、運転――すべてが分業されていて、5人が息を合わせて一台の戦車を操る様子は、まさに軍事チームワークの結晶という感じです。

 物語は、そんなベテラン隊員たちの戦車部隊に、一人の若い新兵が配属されるところから動き出す。彼はそれまで普通の平和な日々を過ごしていた青年で、突然戦場という地獄に放り込まれることに。殺しが日常になっているベテラン兵士たちの感覚に、はじめはまったくついていけない。人を殺すことがヒーローのように扱われてしまう戦争という状況に、新兵と同じ目線で観ていても心が痛くなります。

 それでも、少しずつ彼は彼らの背負ってきたもの、そして「未来ある若者には自分たちのようになってほしくない」という思いに気づいていく。その流れの描写はすごく良かったです。戦争に染まった人たちが、ただ冷酷な機械のように描かれるのではなく、その中でも人間としての感情や矛盾があることが丁寧に見えてくるという。

 ドイツのティーガー戦車とのバトルシーンは非常に見応えがありました。絶望的な戦力差をどう乗り越えるのか、という戦術的な緊張感が高く、あそこは間違いなく映画のハイライトだったと思います。

 ただし、クライマックスになるとその勢いがやや失速する印象があり。圧倒的な物量で攻めてくる敵に対して、知恵や経験を生かすのかと思いきや、結局はただ撃ち合いを続けるだけの展開になってしまいました。戦術的な駆け引きがあるわけでもなく、火力に頼って消耗していく流れに、どこか冷めて見てしまいました。

 とはいえ、戦車内部のリアルな描写や、戦場における兵士たちの葛藤、密室での人間関係など、他の戦争映画とは一線を画すテーマが多く描かれていたと思います。狭い戦車の中でタバコを吸っているのを見て「え、ここで吸えるんだ」と思ったり、細かい描写のリアリティが地味に面白かったです。戦車をテーマにした映画に出会う機会があまりなかっただけに、全体としてはとても新鮮で、観てよかったと思える一本でした。

☆☆☆

鑑賞日: 2014/11/29 TOHOシネマズ南大沢  2016/08/25 Blu-ray

監督デビッド・エアー 
脚本デビッド・エアー
出演ブラッド・ピット 
シャイア・ラブーフ 
ローガン・ラーマン 
マイケル・ペーニャ 
ジョン・バーンサル 
スコット・イーストウッド 

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