映画【大将キム・チャンス】感想(ネタバレ):金九の原点を描く感動作|知識が光となる収容所ドラマ

Man of Will
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●こんなお話

 収容所内で教育をして囚人たちの不当な扱いと戦う話。

●感想

 ある殺人事件から始まる。冒頭、主人公が日本人を殺害したという罪で逮捕され、裁判にかけられる。彼は、自身の行動の動機として、日本人による韓国の国母殺害を訴えるが、証拠不十分として訴えは退けられ、死刑の判決が言い渡される。

 やがて舞台は収容所へと移る。そこでは所長や看守が日本の意向に沿うように振る舞い、囚人たちは管理されている。主人公は到着早々、古株の囚人といざこざを起こす。その男は古くから収容されている存在で、看守たちとも暗黙の了解があるような立場だ。主人公は何度もその男に挑んでいき、しだいに一目置かれるようになっていく。

 主人公には読み書きができるという強みがあり、それが少しずつ周囲との関係を変えていくきっかけになる。やがて彼は、読み書きができないベテラン囚人に字を教えるようになる。その男は感化され、看守への陳情書を綴るが、提出されたその手紙は無視され、もみ消されてしまう。

 それでも主人公は、看守たちの土地関連の書類作成を手伝ったり、囚人たちの家族への手紙を代筆したりして、少しずつ信頼を得ていく。その過程で主人公は、勉強や知識が人の心を変え、環境を変える可能性があると信じ始める。ひとりで抱え込まず、仲間たちにも読み書きを教えはじめる。学びが希望をつくるという信念が芽生えていく。

 時代は、日本が朝鮮に鉄道を敷くという新しい計画に動いており、囚人たちも労働力として動員される。労働の現場では事故が起き、ある看守が命の危険に晒されるが、憎しみの感情だけではなく、互いを思いやる行動も垣間見えるようになる。その姿は、時代や立場を超えて人間らしさが滲む瞬間として印象に残りました。

 やがて、主人公の死刑執行の日が訪れる。仲間たちと別れの時間を過ごし、処刑場で、日本の不正や理不尽さを訴え続ける。しかしその瞬間、かつての囚人たちが書いた陳情書がついに韓国皇帝のもとに届き、執行は直前で中止される。

 最後、主人公は仲間とともに脱獄し、やがて独立運動の象徴である金九として歴史の舞台へと姿を変えていく。本作のラストにその事実が明かされ、観客としては静かに驚きを感じました。

 知識が人を救い、文字が自由をつなぐ手段となる。そんなメッセージが強く伝わってくる作品でした。収容所という閉ざされた空間の中でも、人間らしさや希望を見せる場面が多く、心が温まる部分もありました。「学ぶことの力」というテーマに、あらためて考えさせられる内容だったと思います。そして、金九の物語として描かれるラストには、思わず背筋が伸びる思いがする1作でした。

☆☆☆

鑑賞日:2025/07/21 Amazonプライム・ビデオ

監督イ・ウォンテ
出演チョ・ジヌン
ソン・スンホン
チョン・マンシク
チョン・ジニョン
ユ・スンモク
キム・ユンソン
パク・ソダム
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