映画【選挙2】感想(ネタバレ):静けさの中に宿る選挙の現実と原発への思い

Campaign 2
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●こんなお話

 2011年4月に行われる川崎市議会議員選挙に今回は無所属で立候補した人を追いかけた話。

●感想

 選挙戦の熱気や喧騒とは裏腹に、ただ静かに、淡々と時間が流れていく選挙の風景が描かれていきます。前作で自民党からの推薦を受けて当選した主人公が、今回は無所属で立候補しているということで、選挙活動を積極的に行うわけでもなく、彼の姿はあくまで傍観者のような立ち位置にあります。

 物語の序盤では、彼が街に貼られたポスターを一人で確認して歩く場面が繰り返されます。人通りの少ない住宅地や、選挙色の薄い商店街の片隅。特に声を張ることもなく、支援者を従えることもなく、候補者である本人がただ静かにポスターの掲示をチェックしていくという行動が、むしろ印象的でした。

 主人公は、今回の選挙戦で街頭に立って有権者に呼びかけることもほとんどなく、選挙活動としては最終日に短い演説を行うだけ。

 一方で、カメラは他の候補者にも目を向けており、駅前で「おはようございます」と声をかけ続ける姿が描かれます。候補者自身が「この行為に意味があるのか」と自問しながらも、やめることはできないという戸惑いのようなものが見えてきます。選挙とは何か、誰のために行われているのかを問いかけているようにも感じました。

 前作で登場していた自民党の関係者が、今回は露骨にカメラを嫌がる場面もあり、政治の場におけるカメラの存在や記録されることへの警戒心もさりげなく描かれていました。撮る側と撮られる側、表に出る側と裏に回る側、その対比も物語に深みを与えていたと思います。

 正直なところ、ストーリーという意味では大きな展開があるわけではなく、どこに向かっているのかが分かりにくいと感じる部分もありました。ただ、だからこそ得られる興味もありました。例えば、街の風景がじっくりと映し出されていく中で、その土地の空気や季節、時代を感じることができます。街のポスター、駅前の喧騒、静かな住宅街の交差点。そういったディテールが積み重ねられ、選挙という非日常が日常に溶け込んでいくような感覚を与えてくれました。

 選挙というものが、候補者の熱意や理念だけではなく、街そのものと深く関わっているということを改めて意識させられる作品でした。何かが劇的に動くという作品ではありませんが、静かで地味な時間の中にも、確かに何かが存在していることをじんわりと感じさせてくれた一本だったと思います。

☆☆

鑑賞日:2025/07/19 Amazonプライム・ビデオ

監督想田和弘 
製作想田和弘 
出演山内和彦 
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