●こんなお話
少女に乗り移った悪魔と悪魔祓い師の戦いの話。
●感想
イラクの遺跡で、老神父が何やら不穏なものを掘り起こしている場面から物語は始まる。その不気味な幕開けとは別に、アメリカでは人気女優とその娘が平穏に暮らしていた。女優は映画監督と親密な関係を築きながら、仕事と家庭のバランスを保っていたが、娘の様子が徐々におかしくなっていく。
一方で、もう一人の登場人物である若い神父カラスは、老いた母を訪ねるも、最終的に彼女を施設で亡くしてしまう。そのことで強い罪悪感を抱え、信仰と現実の狭間で苦悩している。
娘の異変は、ベッドが激しく揺れるようになったり、急に口調が荒くなったりと、次第に顕著になっていく。心配した母親は病院に連れて行き、数々の西洋医学的な検査や治療を受けさせるが、どれも原因はわからず、むしろ娘はどんどん苦しんでいく。
その間、映画監督が何者かに殺されたような状態で発見され、警察も捜査に乗り出す。混乱の中で、やがて娘の症状は「医学では説明できない何か」である可能性が示され、ついに悪魔祓いを行うという選択肢が出てくる。
カラス神父は当初、悪魔の存在に懐疑的だったが、少女の口から自分の亡き母の声で語りかけられたことをきっかけに、ようやくその異常さを受け入れる。そしてイラクから戻ってきた老神父メリンが呼ばれ、二人の神父が悪魔祓いに挑む。
悪魔祓いの儀式は、派手なアクションやエフェクトはなく、聖水をかけ、聖書の言葉を読み上げるという静かな対話のような形で進む。しかし、部屋が異常な寒さに包まれ、吐く息が白くなり、少女の姿が変化していく。神父たちを精神的に揺さぶる悪魔のささやきが続き、緊張感が高まっていく。
クライマックスではカラス神父が大きな決断をし、事態はひとまず終息する。しかし、それが本当に「勝利」だったのかは明言されず、不安と余韻を残しておしまい。
悪魔との戦いは、単なる勝ち負けでは終わらない。信仰、罪、母との絆、人間の弱さと強さ、そのすべてが詰まった深いホラー映画でした。直接的な恐怖ではなく、積み重ねた空気と演出でじわじわと心に染み込んでくる恐ろしさ。派手さはないですが、観終わった後に重くのしかかる名作だと思います。
☆☆☆☆
鑑賞日:2012/06/25 Blu-ray 2022/12/15 Amazonプライム・ビデオ
監督 | ウィリアム・フリードキン |
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脚本 | ウィリアム・ピーター・ブラッティ |
原作 | ウィリアム・ピーター・ブラッティ |
出演 | エレン・バースティン |
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マックス・フォン・シドー | |
リー・J・コッブ | |
キティ・ウィン | |
ジャック・マクガウラン |