●こんなお話
イップ師匠が理不尽に怒りの鉄拳を食らわすシリーズ最終章の話。
●感想
もはや水戸黄門的な同じ流れのストーリーが繰り広げられる中、やっぱりドニー・イェンさんの達観したたたずまいとめっちゃ強いキャラクターがめちゃくちゃかっこいい安定のシリーズでした。
イップ・マンは、病気を抱えながらもアメリカに渡り、中国武術を守り広めようとする。その目的のために、現地で活動する武術組合に顔を出し、円卓での礼儀正しい挨拶が始まるかと思いきや、すぐに腕力勝負となる。最初に対峙するのは、太極拳の師匠。静と動を併せ持つその戦いは、互いに敬意を払いながらも一歩も譲らぬものだった。加えて、海兵隊の訓練に参加し、武術の真価を示すシーンや、現地の不良学生を正す場面など、イップ・マンのアクションはどれも力強く、そして気品を感じさせる。
主人公だけでなく、周囲のキャラクターたちにも見せ場が与えられている。太極拳の師匠が海兵隊員と対決したり、娘がいじめっ子に立ち向かったり、ブルース・リーが空手家集団に挑んだりと、それぞれの立場と信念が拳を通して描かれる。特にブルース・リーが道場でアメリカ人の空手家たちを圧倒する場面では、サービスカットとしての役割以上に、中国武術の誇りと意志を感じさせるような描写が印象的でした。
ストーリーとしては勧善懲悪のわかりやすさが軸となっていて、それがシリーズの醍醐味にもなっているが、敵役のあまりに単調な悪役ぶりには少し疑問を抱いてしまうところもあったかもしれないです。白人の少女が中国人の娘をいじめる描写なども、あまりに一面的で、もう少し深みがあるとより良かったのではと思います。親子関係の描写もやや急ぎ足で、反抗期の息子が急に心を開くきっかけが、イップ・マンの病気の告白のみというのは、やや唐突さを感じてしまった。また、太極拳の師匠との決着が地震によって中断されるという展開は、少しユーモラスに映ってしまい、緊張感がやや薄れてしまった気も。
とはいえ、イップ・マンと彼を取り巻く人々の信念や情の深さが胸を打つ場面が随所にあり、戦うだけではない、家族や弟子とのつながりが描かれることで作品に奥行きが加わっていたように思います。シリーズを通じて流れてきた夫婦愛や親子愛が今作でもしっかり描かれており、エンディングで過去の映像が回想として流れる中、木人の音と共に川井憲次さんのテーマ曲が響く瞬間には、自然と目頭が熱くなりました。マーシャルアーツ映画でありながら、ヒューマンドラマとしての味わいもたっぷり感じられる一本だったと思います。
☆☆☆
鑑賞日:2020/07/14 109シネマズ川崎
監督 | ウィルソン・イップ |
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アクション監督 | ユエン・ウーピン |
脚本 | エドモンド・ウォン |
深沢寛 | |
チェン・タイリ | |
ジル・レオン |
出演 | ドニー・イェン |
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スコット・アドキンス | |
チャン・クォックワン | |
ウー・ユエ | |
ヴァネス・ウー | |
クリス・コリンズ |