●こんなお話
イップ師匠が理不尽に怒りの鉄拳を食らわすシリーズ最終章の話。
●感想
がんを患い余命を宣告されたイップ・マンは、息子イップ・チンの将来を案じ、進学先を探すためアメリカ・サンフランシスコへ向かう。現地の中華総会で紹介状を得ようとするが、会長ワン・ゾンホワは、ブルース・リーが中国武術を外国人へ教えていることに強い反発を抱いており、イップ・マンに協力的な態度を見せない。紹介状は得られず、イップ・マンは単独で学校探しを続けることになる。
その頃アメリカでは、中国系住民に対する差別が色濃く残り、海兵隊内部でも中国武術は軽視されていた。軍曹ハートマンは中国武術を訓練に取り入れようと試みるが、上官ゲデスはそれを拒否し、空手こそ優れていると断言する。ハートマンはブルース・リーの道場を訪れ、その圧倒的な実力を目の当たりにすることで考えを強める。
イップ・マンはブルース・リーと再会し、その活動を静かに見守るが、総会内部では対立が激しくなる。ワンの娘ヨンは学校でいじめを受けており、やがて衝突が暴力へと発展する。武術で対抗するものの問題は拡大し、社会に根付いた偏見が浮き彫りになる。
やがて海兵隊基地で武術対決が行われることになり、ワン・ゾンホワが脅迫や中国武術を侮辱されたことにより出場することに。ワンはゲテスと対決して敗北。
海兵隊基地に乗り込んだイップ・マンはゲデスと直接対峙する。間合いと連打を活かした攻撃で徐々に主導権を握り、激闘の末にゲデスを打ち破る。これにより中国武術の価値が認められ、ハートマンの取り組みも評価されることになる。
その後イップ・マンは香港へ戻り、息子との関係を見つめ直す。病が進行する中で、彼は武術だけでなく人としての在り方を伝え、過去を思い出しつつおしまい。
シリーズを通して続いてきた王道の構図が今作でもしっかり踏襲されており、安心感のある展開が楽しめました。その中でもドニー・イェンの落ち着いた佇まいと圧倒的な強さはやはり格別で、画面に立つだけで空気を支配するような存在感が際立っていました。
異国の地で武術の価値を示す流れは分かりやすく、礼節を重んじながらも必要な場面では一切ためらわず戦う姿が印象的です。太極拳の師匠との攻防や、軍隊内での実践的な戦いなど、単なる力比べではなく思想や誇りがぶつかり合う構図が見応えにつながっていました。
周囲の人物にも見せ場が用意されている点も良かったです。ワン・ゾンホワの実力や娘ヨンの奮闘、そしてブルース・リーの鮮烈な登場など、それぞれの立場から武術の意味が描かれており、物語に厚みを加えていました。特にブルース・リーの場面は観客へのサービスにとどまらず、中国武術の精神を象徴するような存在として機能していたと感じます。
一方で、敵役の造形や対立構造はやや単純に映る部分もあり、もう少し多面的な描写があればさらに深みが増した印象も受けました。また、親子関係の変化がやや駆け足に感じられる箇所もあり、心情の積み重ねをもう少し丁寧に見たかったという思いも残ります。
それでも、シリーズを締めくくる作品としての重みは十分にあり、戦いだけでなく人とのつながりや継承というテーマがしっかりと描かれていました。過去を振り返るような演出と音楽が重なる場面では、長く続いた物語の余韻がじんわりと広がっていき、心に残る一本だったと感じます。
☆☆☆
鑑賞日:2020/07/14 109シネマズ川崎 2026/05/05 U-NEXT
| 監督 | ウィルソン・イップ |
|---|---|
| アクション監督 | ユエン・ウーピン |
| 脚本 | エドモンド・ウォン |
| 深沢寛 | |
| チェン・タイリ | |
| ジル・レオン |
| 出演 | ドニー・イェン |
|---|---|
| スコット・アドキンス | |
| チャン・クォックワン | |
| ウー・ユエ | |
| ヴァネス・ウー | |
| クリス・コリンズ |


