●こんなお話
子どものときから念じるだけで発火させる能力パイロキネシスの持ち主の女性が、大切な妹分を殺されたので復讐しようとする話。
●感想
特殊な力「パイロキネシス(発火能力)」を持つ主人公が、ある事件をきっかけに動き出すところから物語は始まっていく。人が突然燃え上がる奇妙な事件が多発する中、発火能力を持つ者たちが次第に浮かび上がり、警察、被害者の遺族、そして正体不明の組織が複雑に絡み合っていく展開になっている。
物語は、主人公が事件の真相を追う軸と、それとは別に刑事たちが捜査を進めていく軸が平行して描かれていく構成。中でも印象的なのは、かつて主人公の力によって妹を失った刑事の存在。過去のトラウマと向き合いながら、いまだ癒えない傷を胸に、発火能力を持つ者に対する怒りと疑念が渦巻いている。一方、事件の裏側で暗躍する「ガーディアン」と呼ばれる組織も登場し、能力者を集めて何かを目論んでいる様子が描かれていく。
発火する人間たちの描写はなかなかの迫力があり、視覚的にも強烈な印象を残すものでした。街中で突然人が燃え上がるカットや、炎が渦を巻くように広がっていくシーンなど、VFXも含めて見応えのある映像演出が多く、力の凄まじさが伝わってくる構成になっていたと思います。特にクライマックスでは爆破と発火のオンパレードで、ビジュアルのインパクトに満ちた盛り上がりがありました。
ただ、全体的な構成としては登場人物や設定を盛り込みすぎている印象もありました。ガーディアンという敵対組織については、規模や目的、組織内の人物像などの描写が少なく、何を企んでいる存在なのかが掴みづらかったです。結果的に、物語の核心に関わる敵としてはやや輪郭がぼやけてしまっていて、緊張感が持続しにくくなっていたのはもったいなかったかもしれません。
伊藤英明さんが演じる、妹を亡くした復讐心に燃える男のキャラクターも、登場時にはインパクトがありましたが、物語が進むにつれて動機がぼやけていく印象もありました。終盤では別の要素に話がシフトしてしまうため、彼の存在感が少し薄れてしまったように感じられます。
また、主人公自身の力を受け入れる苦悩や、同じ能力を持つ者たちの心の揺れ動きも描かれていくため、それぞれの心情を丁寧に追っていくにはやや尺が足りないようにも感じました。特に、刑事たちが超常的な事件をどう受け入れていくのか、という過程がもっと丁寧に描かれていれば、よりドラマに深みが出たように思います。
それでも、エンターテインメント作品として、能力者たちのバトルや発火シーンの派手さ、テンポの良い展開などは最後まで楽しむことができました。上映時間110分という中で、さまざまなキャラクターが交錯し、アクションやサスペンスの要素をしっかり詰め込んだ作品だったと思います。ビジュアル重視の映画を楽しみたい方には十分に見ごたえがある一作でした。
☆☆☆
鑑賞日:2013/10/14 DVD
監督 | 金子修介 |
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視覚効果 | 小川利弘 |
脚色 | 山田耕大 |
横谷昌宏 | |
金子修介 | |
原作 | 宮部みゆき |
出演 | 矢田亜希子 |
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伊藤英明 | |
桃井かおり | |
原田龍二 | |
長澤まさみ | |
吉沢悠 | |
徳山秀典 | |
永島敏行 | |
石橋蓮司 |