ドラマ【零日攻擊 ZERO DAY ATTACK】感想(ネタバレ):台湾社会を映す濃密な群像劇

Zero Day Attack
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●こんなお話

 中国の侵攻が目前に迫った台湾で政治家やユーチューバーや市井の人たちの全10話。

●感想

 物語は、中国軍の侵攻が現実に迫る中、台湾の現代社会を背景に、政治、宗教、歴史、貧富の差、そして個人の信仰や倫理といった多層的なテーマを扱っていたと思います。ひとつの国の中にこれほど多様な視点や価値観があるのかと驚かされるほどで、それぞれのエピソードがまるで“台湾という国そのものの断面”を見せているようでした。市長選を巡る政治劇や、中国との国境最前線で人民解放軍と対峙する兵士たちの緊迫感ある話などは、歴史と現代が交錯する構成でとても印象的でした。

 また、富裕層が国外へ逃げ出すのか戦うのか葛藤する話などは、経済成長の裏にある格差社会をリアルに描いており、登場人物たちが抱える不安や焦燥がひしひしと伝わってきました。一方で、ユーチューバーが動画を撮る話や、AIに恋をする現代的なエピソードなどもあり、テクノロジーと人間の関係を風刺的に描いていて興味深かったです。台南の田舎で霊媒師が登場するホラー調の回もあり、文化や信仰が人々の心の奥にどう影響しているのかを見せてくれる構成でした。

 ただ、それぞれの物語がかなり異なるテーマを扱っているため、集中して観ないと内容を掴むのが難しい部分もありました。特に政治的な背景や台湾特有の宗教観、社会問題などに馴染みがないと、作品の深い部分を理解するのは少しハードルが高い印象です。それでも、一話一話が短編映画のような完成度を持っており、台湾社会の“いま”を多面的に切り取ろうとする意欲が強く感じられました。

 映像の質も高く、都市のざらついた空気感から地方の湿った風景まで、撮影のトーンが各話で異なっているのが魅力です。特に中国との緊張感を描く戦闘シーンや、宗教儀式の場面でのカメラワークは迫力があり、リアリティと幻想の境界が曖昧になるような映像表現が印象的でした。

 全体として、台湾という国の多層的な現実を描き出した意欲作だと思います。娯楽性と社会的・文化的テーマの両立に挑戦していて、各エピソードに込められた問いかけが静かに心に残る作品でした。短編映画集のように一話ずつじっくり味わうタイプのドラマで、観る側にもある程度の知識や集中力が求められる作品だと思います。

☆☆

鑑賞日:2025/10/11 Amazonプライム・ビデオ

監督ウー・ジーエン
スー・イーシュエン
リン・チールー
出演ヨウ・アンシュン
チャップマン・トゥ
シエ・ジャンイー
チェン・ユー
リエン・ユーハン
ヨーク・スン
水川あさみ
ロイ・チャン
ラン・ウェイホア
ヤン・フージアン
レオン・ダイ
エイダ・パン
カイザー・チュアン
ホウ・イェンシー
リー・グァンイー
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