映画【海上48hours 悪夢のバカンス】感想(ネタバレ):青い海が牙をむく、サメと若者たちの90分

SHARK BAIT
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●こんなお話

 酔って無断でジェットスキーを盗んだ若者たちが、沖で故障して漂流し、サメに次々食われる話。

●感想

 メキシコ近海。砂浜で、大学生5人のグループがバカンスを満喫していた。音楽が鳴り響き、笑い声と潮風が混ざる夜。酒を飲み、踊り、騒ぎ、若さの勢いに任せて朝を迎える。
 酔いの残る頭のまま、彼らは無断でジェットスキーを2台拝借し、海の向こうへと飛び出していく。海面を切り裂くエンジン音、追いかけっこのようなスピード。恋人たちははしゃぎ、友人同士で笑い合う。全てが自由で、全てが軽やかだった。

 しかし、ふとした衝突がその時間を壊す。2台のジェットスキーが正面から激しくぶつかり合い、片方は大破、もう片方も動かなくなる。海に投げ出された彼らは、骨折、出血、繋がらないスマホ、そして広がる海の孤独に取り残される。どこまでも続く青の中で、助けを呼ぶ手段もなく、日差しに焼かれ、海流に流されていく。

 やがて海面の下に“何か”が現れる。骨折したトムの足から滲み出る血に引き寄せられるように、サメの影が現れた。白い泡が立ち、赤い水が広がる。彼は叫ぶ間もなく海の底へと引きずり込まれる。
 恐怖に駆られた仲間の1人は、遠くに見えたヨットを目指す。だが、その希望も一瞬のうちに絶たれる。泳ぎ出した男性があと少しの距離でサメに襲われ、海に静寂だけが残る。

 夜が訪れる。気温が下がり、体力は奪われていく。彼らは言葉を失い、やがて互いの秘密がこぼれ始める。浮気の暴露、責め合い、涙。恐怖と疲労の中で人間関係が崩れていく。
 再びサメが姿を現し、混乱の中で女性が噛みつかれ、海に血が広がる。エンジンをかけて逃げようとするが、追いかけてくる影は執拗だった。最後の決断として、重傷を負った男性が自ら海へ飛び込み、恋人を逃がすために身を差し出す。女性はその犠牲の上で、やっと陸にたどり着いておしまい。

 王道のサメ襲撃ものとして、非常に安定した作りだったと思います。限られた登場人物、閉ざされた海という舞台、そして次第に追い詰められていく恐怖の段階。90分という短い時間ながら、緊張感を切らさず進む構成は見応えがありました。サメの動きも安っぽさがなく、噛みつく瞬間の水中ショットや、血の拡散を捉えるカメラワークに迫力があり、視覚的にも楽しめました。海の静けさと暴力の対比が美しく、音の使い方にもセンスを感じます。

 一方で、物語としての新鮮さはやや少なかった印象です。サメ映画の定番的展開が多く、登場人物の背景や関係性が浅いため、もう少しドラマ部分に厚みがあるとさらに深く入り込めたと思います。ただ、シンプルだからこそテンポよく見られるという利点もあり、娯楽作品としては十分に楽しめる内容でした。

 派手な仕掛けよりも、海の広さと人間の小ささを対比するような描写が印象的で、観終えたあとも波の音が耳に残るような感覚があります。バカンスの延長にある死というテーマを、あくまで軽やかに描ききった監督の手腕も好感が持てました。サメ映画好きには安心しておすすめできる一本です。

☆☆☆

鑑賞日:2025/10/25 U-NEXT

監督ジェームズ・ナン 
脚本ニック・ソルトリーズ 
出演ホリー・アール 
ジャック・トゥルーマン 
キャサリン・ハネイ 
マラキ・プラー=ラッチマン 
トーマス・フリン 
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