●こんなお話
日中戦争後の国共内戦に翻弄される3組の男女の話。
●感想
抗日戦争の中で英雄として描かれる軍人の主人公が、平和な時代になるとダンスパーティーでヒロインと出会い、一緒にダンスを踊ったり、車の運転練習をしたりしながら恋に落ちていく。冒頭はジョン・ウー監督らしく、戦車と爆発が飛び交うド派手な戦闘シーンで始まり、大人数が画面内で動き回るスペクタクルな演出も圧巻でした。抗日戦を描いた前半は、まさにジョン・ウーらしい燃える展開。
一方、物語は三組のカップルに焦点が当たる構成になっていて、それぞれが異なる視点から戦争の悲劇とロマンスを描いている。台湾人の医師は戦時中、日本で医療に従事していた際に日本人女性と親しくなり、戦後は台湾に戻ってもその想いを捨てきれずに医師として働き続けている。さらに、幼なじみを探す女性も登場し、読み書きができないながらも看護師ボランティアとして傷病兵の中から彼を見つけようと懸命に努力しているが、思うようにいかず苦悩が続く。
やがて国共内戦が激化し、軍人の主人公は妻を台湾に疎開させ、自身は最前線へ向かう。台湾では偶然、妻が住んだ家に手紙が残されていて、それが台湾人医師の恋人に関わるものではないかと推測される展開も興味深い。幼なじみを探していた女性はついに職も失い、生活のために身体を売るようになってしまう。死に際の兵士から指輪を遺族に渡してほしいと頼まれ、急いで向かうが、すでにその家族は自殺していた。戦争の残酷さが静かに描かれる場面でした。
将軍は蒋介石の無謀な命令により、食料もなく士気も下がる中での戦いを強いられ、部下たちは次々と投降していく。共産党側の司令官から「こちらに来い」と誘われても、軍人としての誇りを守るために最後まで戦う道を選ぶ姿は、戦争映画としての見どころの一つ。一方で、その部下である主人公は士気が下がり切っており、共産党に投降していく仲間たちを責めることもできず、かつて偽装夫婦として出会った女性に思いを寄せながら複雑な気持ちを抱えている。
クライマックスの戦闘シーンはやはり迫力があり、爆発や銃撃、スローモーションの演出も含めて、戦争映画としての高揚感が最大限に高められる瞬間でした。ただし、恋愛パートについては、やや説明不足で感情移入がしにくかった印象があったり。チャン・ツィイーがなぜそこまでして幼なじみを探すのか、また金城武と長澤まさみの関係が回想ばかりで描かれていて、人物としての深みがあまり感じられなかったです。
全体として、戦争映画としての迫力やエンタメ性はさすがのジョン・ウーでしたが、メロドラマパートになると急に音楽が大きくなって感傷的な演出が強くなり、テンポが落ちてしまったのが残念で。ナレーションや手紙による心情の説明もやや古さを感じる部分があったりしました。それでも、戦争の理不尽さや、人間の情感、葛藤を描こうという意欲はしっかりと伝わってくるものでした。
そして、金城武の学生服姿には思わず笑ってしまったが、それも含めて国民党サイドの視点から語られたこの映画は、歴史的にも興味深い一本でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2019/10/17 DVD 2023/09/24 U-NEXT
監督 | ジョン・ウー |
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脚本 | ジョン・ウー |
原案 | ワン・ホエリン |
出演 | チャン・ツィイー |
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金城武 | |
ソン・ヘギョ | |
ホアン・シャオミン | |
トン・ダーウェイ | |
長澤まさみ |
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