●こんなお話
自衛隊が戦国時代にタイムスリップして大暴れする話。
●感想
訓練のために集結していた自衛隊員たちが突如謎の光に包まれ、気づけばそこは戦国時代。甲冑姿の武士たちにいきなり襲われ、状況が飲み込めぬまま反撃するという導入で始まるこの作品は、現代の軍事力と戦国時代の武力とがぶつかり合うという、まさに空想と歴史の境界を揺さぶる物語になっていました。
自衛隊が昭和へと戻るには「天下を取るしかない」という説がなぜか急浮上し、特に科学的根拠も説明されぬまま、その目的を目指して戦国の世を駆け抜けていくことになります。歴史に干渉してはならない、と序盤で強調されていたはずが、実際に矢を受けて怒りを爆発させる主人公・千葉真一さんが反撃を開始し、あれよあれよと敵を打ち倒していく流れには驚かされます。戦国武士を前に容赦なく機関銃を放つ姿は、フィクションならではの破天荒さが詰まっており、そこに漂う反戦とロマンの混在したトーンが独特の味を出していました。
さらに、渡瀬恒彦さん演じる別の隊員も自衛隊への不信からクーデターを企て、戦国の地で独自の道を歩もうとします。そんな彼もまた銃を手に取り、歴史の表舞台に深く介入していき、現代兵器と戦国の刃が交錯する混沌とした展開に引き込まれていきました。
中盤では、夏八木勲さん演じる長尾景虎との出会いがあり、現代の兵士と戦国の武将が言葉を越えて友情を育む様子が描かれていきます。ふんどし姿で海辺を駆け、衣装を交換し合いながら馬を並べて走るモンタージュは、時代を越えた男同士の信頼関係の象徴のようで、妙な感動すら覚えました。
その一方で、他の隊員たちは現地の女性や子どもたちと心を通わせていき、戦の合間に人間としての温もりを感じる場面も挿入されます。ただ不思議なことに、物語に登場する女性たちがなぜかほとんど言葉を発しない点には違和感もあり、意図的な演出なのか、製作当時の時代感覚なのかと考えてしまうところでもありました。
そして、主人公たちは京を目指し、武田信玄との戦に臨むことになります。ここでもまた「俺たちだけで信玄をとる」と強引な作戦を敢行。補給も戦略もあったものではない突撃で、果たしてそれが現代人としての判断なのかどうか、観ていて不安になる瞬間もありつつ、それもまたこの作品らしい大胆な演出だったのかもしれません。
クライマックスとなる合戦シーンは、馬や兵士が画面狭しと駆け巡り、爆発が起こるなど迫力満点のアクションが続いていきます。昭和の日本映画の撮影現場の勢いを感じさせるシーンの連続で、実際に馬を走らせ爆薬を使って撮ったという実直さに胸を打たれました。ヘリコプターにぶら下がって銃を乱射する千葉真一さんや、そこから飛び降りる真田広之さんなど、今では考えられないアクションが次々と映し出され、終盤にかけての映像的な見応えも十分だったと思います。
また、景虎が現代の腕時計を二の腕に巻いて時間を確認する場面も印象的で、時代を超えたアイテムの存在が持つ意味や、未来を信じる姿勢を象徴しているようにも感じられました。
家族で鑑賞していたら夜這いの描写などに一瞬気まずくなる場面もありますが、それも含めて当時の角川映画らしいサービス精神と勢いが感じられ、全体としては非常にパワフルな一本だったと思います。時代を間違えて生まれた男たちが、それでも自分の誇りと仲間のために生き抜こうとする姿には、ある種の美学のようなものも感じました。
☆☆☆
鑑賞日: 2013/05/16 DVD 2022/02/25 BS12 トゥエルビ
監督 | 斎藤光正 |
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アクション監督 | 千葉真一 |
脚本 | 鎌田敏夫 |
原作 | 半村良 |
製作 | 角川春樹 |
出演 | 千葉真一 |
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中康次 | |
江藤潤 | |
速水亮 | |
にしきのあきら | |
三浦洋一 | |
かまやつひろし | |
渡瀬恒彦 | |
角野卓造 | |
鈴木ヒロミツ | |
竜雷太 | |
小野みゆき | |
岡田奈々 | |
夏木勲 | |
成田三樹夫 | |
小池朝雄 | |
薬師丸ひろ子 | |
草刈正雄 | |
佐藤蛾次郎 | |
鈴木瑞穂 | |
岸田森 | |
宇崎竜童 | |
勝野洋 | |
真田広之 |
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