●こんなお話
ベトナム戦争の帰還兵が妻子を殺されて、戦友とリベンジの旅に出る話。
●感想
捕虜収容所から帰還した2人のベトナム帰還兵。派手な歓迎式典が行われるけれど、主人公たちの表情はどこまでも無表情。生還はしても、心はもうどこかに置いてきてしまったかのようで、ここから始まるのはただの復讐劇ではなく、静かに壊れた男の物語でした。
家に戻っても待っていたのは悲劇ばかり。妻は地元の警官と親しくなっていて、成長した息子も心を開いてくれない。家庭はバラバラで、ようやく帰ってきたというのに、主人公にはもう居場所がない。浮気の告白を受けても、顔色一つ変えない。あの捕虜収容所で「生き延びた」というより、もう人間としての感情が死んでしまったことが静かに伝わってきました。
そして悲劇は続いて。式典で受け取った銀貨がきっかけとなり、謎のメキシコ人たちが家を襲撃。主人公は片腕を失い、妻と息子は殺される。ここから物語は復讐の旅へと突入。
意識の中で聞いた微かな名前と店の記憶だけを頼りに、犯人を探していく道中。一人の女性と出会い、助けられながらも、主人公の心はずっと虚無のまま。ただ一つ、復讐という目的だけが彼を動かしている感じ。
義手で拳銃を操作するための訓練、ショットガンの銃身を自ら切って扱いやすく改造するシーンには痺れます。執念の捜査の末、情報を握る男を容赦なく拷問して口を割らせ、ついに犯人グループの居場所へたどり着く。
かつての戦友であるトミー・リー・ジョーンズ演じる男の元を訪ねて、「見つけたぞ」「どの武器にしましょう」という、言葉少ななやり取りがたまらなくカッコいいです。すでに何もかもを失った男たちが、売春宿に突入していく姿には静かな熱量と悲壮感が満ちていました。
クライマックスは、復讐というよりも殺戮に近く。だけど、どれだけ敵を倒しても、そこにカタルシスやスッキリ感は一切なし。ただ、すべてを終えたあとに、何も言わず背中を見せて去っていく男たちの渋さと虚無感だけが心に残るものでした。
ハードボイルドな復讐劇としては最高。でも、暴力描写や人の死を淡々と描きすぎていることで、不快に感じるか、スタイルとして楽しめるか、受け取り方は人によって分かれると頃だと思います。個人的には、この乾いた世界観と男たちの無骨さに痺れた一本でした。
☆☆☆☆
観賞日:2013/11/27 DVD
監督 | ジョン・フリン |
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脚本 | ポール・シュレイダー |
ヘイウッド・グールド | |
原作 | ポール・シュレイダー |
出演 | ウィリアム・ディヴェイン |
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トミー・リー・ジョーンズ |
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