●こんなお話
特攻隊を見守った食堂のおばちゃんと彼女を慕う特攻隊員たちの話。
●感想
太平洋戦争末期、特攻隊員として命を懸けた若者たちの姿を描いた本作。作品のクライマックスには、主人公たちが敵艦に突入していく特攻シーンがしっかりと描かれていて、戦場の臨場感とともに、その壮絶さが観る者の胸を打ちます。映像面でも工夫がなされていて、米軍の艦上での迎撃体制や、乗組員たちの緊迫した表情がきちんと挟み込まれていて、単なる空撮やCGに頼るのではなく、そこに“人”がいるという演出がなされていたのは好印象でした。特攻機が炎上しながら墜落していく描写なども、悲壮な美学だけではない現実の重さを感じさせる描写になっていて、鑑賞後にも残るものがあったように思います。
ただ、映画全体を通して振り返ってみると、やや構成の単調さが目立つ印象もありました。特攻隊員の一人ひとりにフォーカスを当てているのは伝わってくるのですが、それぞれのエピソードがどこか似たトーンと展開でつながっており、悲劇の連続として淡々と語られていくような構成になっていました。
たとえば、エンジンの不調によって帰還を余儀なくされ、それを理由に上官から激しく叱責された末、再出撃を命じられて命を落とす者がいたり、朝鮮半島出身であることに複雑な思いを抱きつつも、仲間と同じく特攻に向かっていく若者がいたり、あるいは「ホタルになって帰ってくるよ」と母に語る少年の純粋さが胸を打つ場面があったりと、個々のエピソードにはそれぞれ違った切実さがあるのですが、映像のトーンや音楽の印象が全編通して似ているため、感情の振れ幅が狭く感じられてしまった部分もありました。
音楽も、悲しみを煽るような旋律が全編にわたって流れており、気持ちを引き込む効果はあるのですが、時にその繰り返しが単調さにつながってしまい、エピソードの輪郭をかえってぼやけさせてしまったようにも思います。130分という比較的長めの尺もあって、終盤にかけては観る側の集中力を保つのが少し難しく感じられました。
とはいえ、ひとつひとつの命に焦点を当て、それぞれの背景や思いを丁寧に描こうとする誠実な姿勢は伝わってきました。戦争映画としての迫力を追うよりも、人間としての若者たちがなぜ特攻へと向かわなければならなかったのか、その理不尽さや葛藤にスポットを当てていた点においては、作品としての意義も確かに感じ取ることができました。
☆☆
鑑賞日: 2019/11/03 Amazonプライム・ビデオ
監督 | 新城卓 |
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脚本 | 石原慎太郎 |
出演 | 徳重聡 |
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窪塚洋介 | |
筒井道隆 | |
岸惠子 | |
前川泰之 | |
中村友也 | |
多部未華子 | |
遠藤憲一 | |
勝野洋 | |
中越典子 | |
桜井幸子 | |
戸田菜穂 | |
宮崎美子 | |
的場浩司 | |
江守徹 | |
長門裕之 | |
寺田農 | |
石橋蓮司 | |
伊武雅刀 |
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