●こんなお話
テクノロジー全盛の時代に、人間の経験と勘が最後の武器になる追跡アクション
●感想
ネオンが街を照らすマカオでは、監視カメラとAI解析を駆使した最新の警察システムが導入され、犯罪抑止の切り札として機能しているはずだった。しかし、その網を嘲笑うかのように、完璧なタイミングと高度なハッキング技術を用いた連続強奪事件が発生し、警察は翻弄される。犯人たちは痕跡を一切残さず姿を消し、テクノロジーに依存した捜査体制の弱点が次第に露わになっていく。
捜査が行き詰まる中、警察上層部は最後の手段として、かつて驚異的な追跡能力と洞察力で数々の難事件を解決してきた伝説的刑事・黄徳忠を現場に呼び戻す。黄はある過去の出来事をきっかけに第一線を退いていたが、事態の深刻さを前に再び捜査へ加わることになる。
現場に復帰した黄は、最新機器を信奉する若手捜査官たち、とりわけ理論派で正義感の強い何秋果と衝突を繰り返す。しかし黄は、数字や映像では拾いきれない人間の癖、街の空気、わずかな違和感を重視し、独自の視点で捜査を進めていく。やがて事件の背後に、元暗殺者で冷酷かつ知能犯でもある傅隆生が率いる犯罪集団「影」の存在が浮かび上がる。
彼らの狙いは単なる金銭ではなく、仮想通貨やデジタル資産を巡る巨大な利権であり、警察の監視網そのものを逆手に取って操る計画だった。黄は傅隆生を尾行する中で警戒され、あえて身分を偽り、距離を詰めて同席し、食事を共にしながら何秋果の家族との関係性を語られるなど、緊張感に満ちた心理戦が展開されていく。
捜査が進むにつれ、黄自身の過去と傅隆生との因縁も明らかになり、追跡と罠の応酬は激しさを増す。やがて警察本部が傭兵集団に襲撃され、銃撃戦が発生し、混乱へと発展する。傅隆生側も養子たちと衝突していく。
最終局面では、黄が長年培ってきた経験と信念を賭け、何秋果がカフェに現れた傅隆生と正面から対峙する。黄も駆けつけ、二人は共闘の形で立ち向かう。逃走を図る傅隆生を追う中で、何秋果は黄の言葉を思い出し、若手捜査官たちも成長した姿を見せてチームとして結束する。激しい追跡の末、ついに傅隆生は追い詰められ、逮捕される。
事件は一応の決着を迎えるが、「影」のネットワークがまだ広がっていること、そして背後にさらなる存在がいる可能性を示す余韻が残され、物語は静かに次の局面を予感させておしまい。
師匠的な立場で後方支援に回るのかと思いきや、前線で激しく戦い続けるジャッキー・チェンの存在感が非常に強烈でした。年齢を感じさせない動きの連続で、観ていて思わず心配になるほどです。
レオン・カーフェイ演じる傅隆生も印象的で、ナイフを用いて淡々と人を刺していく冷酷さが際立っており、サイコパス的な怖さがしっかり伝わってきました。銃撃戦の迫力も相当なもので、特に刃物による攻撃時の効果音が生々しく、緊張感を高めていました。
物語の構造として、ジャッキー・チェンと若手刑事による擬似親子関係と、傅隆生と養子たちの歪んだ擬似家族関係を対比させて描いている点は興味深かったです。善悪の立場は違えど、どちらも「受け継ぐもの」を抱えている構図が印象に残ります。
ただ、上映時間が約140分と長く、敵側の内輪揉めや擬似親子関係の衝突が繰り返される場面では、感情表現が過剰に感じられ、緊張感よりも間延びした印象が勝る部分もありました。養子たちが泣き叫ぶ場面が重なるにつれ、感動よりも疲労感が先に立ってしまったのは少し惜しいところです。
それでも、アクションの密度と俳優陣の存在感は非常に高く、チームプレーで相手に挑むクライマックスは気持ちよく、迫力ある犯罪アクションとして強く印象に残る一本でした。
☆☆☆
鑑賞日:2025/12/14 イオンシネマ座間
| 監督 | ラリー・ヤン |
|---|---|
| アクション監督 | スー・ハン |
| 脚本 | ラリー・ヤン |
| 原作映画「天使の眼、野獣の街」脚本 | ヤウ・ナイホイ |
| アウ・キンイー |
| 出演 | ジャッキー・チェン |
|---|---|
| チャン・ツィフォン | |
| レオン・カーフェイ | |
| ツーシャー | |
| ジュン |

