●こんなお話
殺し屋しかいない世界で襲ってくる殺し屋たちを返り討ちにする話。
●感想
アクションのバリエーションの豊かさは相変わらず圧倒的で、特に冒頭から続く一連のアクションシークエンスには完全に引き込まれました。前作からの流れをそのまま受け継いでいるオープニングでは、主人公が飾ってあるナイフを片っ端から抜き取って投げ、敵を次々と倒していくシーンがあり、そこから馬とバイクを使ったチェイスへと流れ込むテンポ感も素晴らしかったです。アクション映画を何本も観ている自分でも「これは新しい」と思える、フレッシュで独創的な演出が光っていました。
中でも個人的に最も印象に残ったのは、ハル・ベリー演じるキャラクターと、彼女の飼い犬たちとの連携による戦闘シーンで。人と犬が完全に一体化して行動し、まさに息を呑む連携プレーで敵を制圧していくあの場面は、何度でも見たくなるほどの完成度だと思いました。
ただ、物語の部分になると、2作目以降に強調されてきた“殺し屋の世界のルール”が中心に据えられている展開に少し退屈さを感じました。主人公が過去の関係者たちを訪ね歩き、渋い顔をされつつも「借りがある」「掟だ」と強引に頼みを通すというやり取りが何度も繰り返されます。そのたびに登場人物がそれぞれのルールを語り、納得したように次の展開に移っていきますが、会話の内容自体が冗長で、頭に入ってこなかったです。
バレエ劇場の女性や、砂漠にいる謎のアラブの王、ハル・ベリーの知り合いなど、設定は面白いのにその活かし方が淡白で、キャラ同士の関係性も薄く感じました。
映像面では【ブレードランナー】や【007 スカイフォール】のような、グラフィカルでスタイリッシュな画作りが際立っていて、ビジュアル的な満足感はありました。ただ、クライマックスのホテル内での長尺の銃撃戦や近接戦では、照明の暗さや構図の複雑さが逆に仇となり、何が起こっているのかが見えづらく、途中から関心が薄れていってしまいました。
アクションの構成もやや一本調子で、主人公がどんどん傷を負ってボロボロになっていくのに、それでも敵をすべて倒してしまう展開には、さすがに「なぜ勝てるのか?」という疑問がつきまとったり。「主人公だから勝つ」としか思えず、緊張感が薄れてしまうものでした。
期待していたインドネシアの【ザ・レイド】組のキャスティングも、ほとんど見せ場がないまま退場してしまい、非常に残念。キアヌ・リーヴスのアクションも以前より動きが重たく、スピード感に欠ける部分があり、そこも迫力を感じにくくしていた要因の一つでした。
総合的に見ると、確かに面白いアクションシーンはたくさんって。ただ、それが全体として面白いアクション映画になっていたかというと、少し物足りなさを感じる出来だと思います。ただし、スタントチームやCG、演出陣の工夫と努力は画面越しにも伝わってきていて、その職人技を堪能できるという意味では非常に見応えのあるシリーズでした。
☆☆☆
鑑賞日: 2019/10/07 チネチッタ川崎 2020/12/23 Blu-ray
監督 | チャド・スタエルスキ |
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脚本 | デレク・コルスタッド |
シェイ・ハッテン | |
クリス・コリンズ | |
マーク・エイブラムス |
出演 | キアヌ・リーブス |
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ハル・ベリー | |
イアン・マクシェーン | |
ローレンス・フィッシュバーン | |
アンジェリカ・ヒューストン | |
マーク・ダカスコス |
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