●こんなお話
田舎の過疎化に国際結婚に介護に差別や偏見とかいろんな日本の問題が詰め込まれた話。
●感想
日々をうまく生きられない、どこか不器用な登場人物たちが次々と現れて、それぞれの叫びや衝動をぶつけ合うようにして物語が展開していきます。画面にはモザイクや意図的に視界を制限するような演出がふんだんに盛り込まれていて、観ていて常に不安定な感覚にさらされるのが特徴的でした。まるで劇薬のような刺激の強さを持つ映像が続く中で、笑いながら見ていたはずの光景が、いつのまにか胸の奥にじわりと残る切なさに変わっていくような、不思議な感触がありました。
物語の中では性や生、暴力といった生々しいテーマが真正面から描かれていて、映像表現もかなり大胆です。好みが分かれる作品だとは思いますが、役者さんたちが全身を使ってぶつかってくるような演技で、観ている側もその熱に引っ張られるような感覚になりました。一人ひとりが社会に馴染めず、自分の居場所を探してもがき続けている姿には、どこか放っておけないものがあります。
序盤は笑って観ていられるようなテンポ感やユーモアがあるのですが、次第にそれが苦しさや哀しみに変わっていく構成も興味深かったです。人物たちの選択や行動は突飛に見えるものもありますが、決して突き放されることはなく、どこかで共感してしまう瞬間があるように思いました。ただ、130分という尺の中で、ほとんどのキャラクターが終始怒鳴っていたり、感情を爆発させているので、中盤あたりから少し疲れてしまう感覚もありました。内容も重たいテーマが続くため、観る側に体力が求められる映画ではあります。
また個人的に印象的だったのは、猟銃の扱いについてで、あまりに雑な管理に思わず驚いてしまいました。ここまでくると現実離れしていて、それすらも演出としての味わいなのかもしれません。全体として、決して整った作品ではないけれど、乱雑で過剰で、けれどどこか目を離せないエネルギーに満ちた作品だったと感じました。
☆☆☆
鑑賞日: 2018/09/20 TOHOシネマズ川崎
監督 | 吉田恵輔 |
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脚本 | 吉田恵輔 |
原作 | 新井英樹 |
出演 | 安田顕 |
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ナッツ・シトイ | |
河井青葉 | |
ディオンヌ・モンサント | |
伊勢谷友介 | |
木野花 |
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