映画【風林火山】感想(ネタバレ):山本勘助の生涯を描く戦国ドラマ

Samurai Banners
スポンサーリンク

●こんなお話

 武田晴信に仕える山本勘助の話。

●感想

 戦国時代、山本勘助は名を知られた将でも名門の家柄でもなく、野望と策略だけを頼りに生きていた。彼は武田家の若き当主である武田晴信に仕えることを強く望み、家中にその名を知らしめるため周到な策を巡らせる。勘助は武田家の重臣である板垣信方の信頼を得るべく行動し、巧みに恩義を示すことで板垣の評価を勝ち取る。その結果、彼は晴信の家臣として迎えられ、以後は軍略家として武田軍の要となっていく。

 やがて勘助は晴信の相談役として重きをなし、信濃国の諏訪頼茂へ攻撃を仕掛ける際には重要な役割を担う。彼は戦いの勝敗だけでなく、和議の可能性にも目を配りながら状況を読み解き、晴信の判断を支える存在として存在感を強めていく。勘助の策は、力で押すだけではない柔軟さと狡猾さを含み、晴信にとって欠かせない助言となっていく。

 しかし勘助は、由布姫への秘めた想いが彼の胸の内に長く残り、軍師としての理と、ひとりの人間として抱く情とのあいだで揺れ動いていく。武田家のために働く軍師でありながら、勘助にはそうした個人的な葛藤もあり、その心の揺れが物語に静かな陰影をもたらしている。

 物語はやがて川中島の合戦へと突き進む。戦国時代でも屈指の大規模な戦いとして知られるこの合戦で、勘助は武田軍の戦力を最大限に生かすべく大胆な布陣を敷き、晴信の掲げる“風林火山”の旗印のもと戦陣を指揮する。しかし作戦は思惑どおりには運ばず、武田軍は危機に追い込まれる。勘助は戦況を立て直すため前線へと向かい、その身ひとつで上杉謙信へ突っ込むように挑み、そのまま戦場に散っておしあみ。

 感想として、まず合戦シーンの迫力が強く印象に残りました。馬の数も多く、画面に広がるスケールの大きさが圧巻で、戦国映画としての見どころがしっかり盛り込まれていたと思います。その一方で、物語の中心が山本勘助と由布姫との関係に寄っていく流れが続き、個人的には少し退屈に感じる部分もありました。戦国の策略を追う物語を期待していたため、恋慕が長く描かれる構成に意外さを覚えました。また全体が三時間という長さで進むため、腰を据えて観る覚悟が必要な作品だと思います。

 それでも、川中島を中心とした戦国の大きな流れや、勘助の人生に寄り添う描写といった要素が調和し、どこか静かな哀しみを感じる映画になっていたと思います。戦国の激しさと、人間の想いが交錯する物語として楽しめました。

☆☆

鑑賞日:2009/12/29 DVD 2025/11/24 U-NEXT

監督稲垣浩 
脚色橋本忍 
国弘威雄 
原作井上靖 
出演三船敏郎 
佐久間良子 
大空真弓 
中村錦之助 
中村勘九郎 
中村翫右衛門 
中村賀津雄 
田村正和 
志村喬 
清水将夫 
山崎竜之助 
中谷一郎 
土屋嘉男 
久保明 
瑳川哲朗 
堺左千夫 
中村梅之助 
緒形拳 
久我美子 
平田昭彦 
市原悦子 
月形龍之介 
戸上城太郎 
石原裕次郎 
タイトルとURLをコピーしました