映画【IT/イット “それ“が見えたら、終わり。】感想(ネタバレ):子どもたちの心に潜む恐怖に迫る、不気味なピエロとの対決

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●こんなお話

 子どもたちの失踪事件が多発する街で子どもたちが立ち向かう話。 

●感想

 町に潜む静かな不安が少しずつ姿を現し始めたのは、ある少年が失踪するという事件からだった。彼の兄が心を痛めながらも日常を過ごそうとする中で、仲間たち――いじめられっこの少年たちが次々に、何か得体の知れないものと出会っていく。彼らは自らを「負け犬クラブ」と名乗り、それぞれに家庭や学校で孤立したり、過去の傷を抱えていた。

 そんな彼らの前に現れるのは、赤い風船を持った不気味なピエロの姿。大人たちには見えない存在で、子どもたちの恐怖や不安、心の闇を形にして近づいてくる。排水溝から顔をのぞかせる第一の登場は特に衝撃的で、まるでスクリーンからピエロが飛び出してきたかのようなインパクトがあります。

 物語は1980年代の町並みを背景に、自転車に乗って駆けまわる子どもたちの姿を描いていく。それだけでも、どこか懐かしくて映画的な魅力にあふれていて。まるでスピルバーグ製作の『E.T.』や、近年の『ストレンジャー・シングス』にも通じる世界観が広がり、序盤からわくわくする空気を感じました。

 それぞれの子どもたちが抱えるトラウマに合わせて、ピエロは姿や行動を変えながら襲いかかってくる。病院での記憶、親からの虐待、兄弟の死、孤独感。どれも大人の視点からは些細な問題に見えるかもしれないが、子どもたちにとっては日常の中で最も大きな恐怖として心に刻まれている。そんな彼らの恐怖に食らいつくようにして、ピエロの脅威は増していく。

 ただ、物語全体としてはホラーとしての構造がやや間延びしている印象もありました。それぞれのキャラクターに丁寧に恐怖体験を描いている反面、全体の進行としてはテンポがゆっくりで、観ていて少し疲れてしまう部分もあったと感じます。中盤を過ぎても個別の恐怖体験が続き、肝心の「どうピエロに立ち向かうのか」がなかなか描かれないため、観客の集中力を引き止めるにはやや難しさがあるように思いました。

 終盤、子どもたちがついにピエロの巣に足を踏み入れて対決に挑む場面では、それまでの恐怖を乗り越えたことでピエロの力が一気に弱まるという展開に。しかし、そこに至るまでのハードルの高さに比べると、決着があまりにもあっけなく感じられてしまい、もっと強烈なカタルシスが欲しかったという思いも残りました。

 また、ヒロインの家庭環境や、いじめっ子との因縁などのサイドストーリーも描かれているのですが、それらが最後まで解決されないまま終わってしまう点に、少しもやもやした気持ちもあります。特に、登場人物たちが恐怖に打ち勝つ過程で、ある種の「殺し」を経験してしまう描写には、子どもたちの成長や解放よりも、罪悪感が残ってしまう印象でした。

 それでも、1980年代の空気感や音楽、映像のトーンなど、作品全体の世界観の構築はとても魅力的でした。時代の空気や、子どもたちの無防備な姿とその裏側に潜む恐怖がバランスよく同居していて、ジャンルとしてのホラー作品の面白さをしっかりと味わえる一本だったと思います。

☆☆☆

鑑賞日: 2017/12/31 TOHOシネマズ川崎 2019/11/06

監督アンディ・ムスキエティ 
脚本チェイス・パーマー 
キャリー・フクナガ 
ゲイリー・ドーベルマン 
原作スティーヴン・キング 
出演ジェイデン・リーバハー 
ビル・スカルスガルド 
フィン・ウルフハード 
ソフィア・リリス 
ワイアット・オレフ 
ジェレミー・レイ・テイラー 
チョーズン・ジェイコブズ 

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