映画【ブルックリン】感想(ネタバレ):海を越えて広がる世界――アイルランドの少女がアメリカで見つけた新しい未来

brooklyn
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●こんなお話

 アイルランドからアメリカに移民して頑張る女の子の話。

●感想

 閉塞感漂うアイルランドの小さな町で暮らす若い女性。日々の生活に何か物足りなさを感じながら、家族や町の人たちとの関係に戸惑いを抱えていた。そんな彼女が思い切って海を越え、アメリカへと新たな一歩を踏み出す。物語は、どこか普遍的で懐かしいような若者の成長譚として描かれていく。

 異国の土地に降り立った主人公は、すぐには新天地に馴染めず、不安と孤独の中でもがいていく。ホームシックに襲われながら、静かに涙する夜もあり、その姿には胸を締めつけられるような思いがありました。最初は何をしてもうまくいかず、言葉の壁や文化の違いにも悩まされるが、次第に同じように移民として暮らす仲間や、働き先での出会い、寮での生活の中に少しずつ安らぎを見出していく。

 やがて出会うのが、アメリカ育ちの誠実な青年。彼との交流が主人公の心を解きほぐし、次第に恋心へと変わっていく様子も穏やかに描かれていく。彼の家族との食事の場面では、温かな団らんの中で少しずつ異国に根を下ろしていく主人公の変化が見えて、見ていて嬉しくなってきました。寮に戻ってはルームメイトと他愛もない会話を交わしながら、ご飯を食べるシーンのひとつひとつも、彼女の成長を支える大事な時間として描かれています。

 そんな穏やかな日々が続く中、ふとした出来事をきっかけにアイルランドへの帰郷を決意する主人公。帰った先で待っていたのは、変わらぬ母と町の空気、そして偶然の再会を果たす地元の青年。今度は彼が主人公の心を揺らし、どちらの土地を選ぶべきか、どちらで人生を築いていくのか、迷いと向き合う時間が丁寧に描かれていきます。

 日常の中で揺れる心の機微や、人との距離感がじっくりと描かれており、大きな事件や劇的な展開はなくても、人生の選択というテーマの重みを感じながら観ることができました。登場人物の誰もが等身大で、どこにでもいそうな存在だからこそ、観ている側にも自然と感情が重なってくるように思います。

 英語を学ぶことに一歩踏み出した主人公が、訛りに悩みながらもちゃんと会話を成立させている様子には、素直に尊敬の気持ちを抱きました。日本語しか話せない自分には、英語という言語が持つ世界の広がりがまぶしく映りました。

 そして、最初から嫌味な印象で登場した町のおばさんが、ラストに発する一言。あの言葉によって主人公は、再びアメリカへ戻る決意を固める。その瞬間、観ている側にも不思議と安心感が広がり、物語の終わりを優しく受け止めることができたように思います。嫌な人だと思っていた人物が、最終的に心強い存在へと変わっていく構造も丁寧で、心に残りました。

 大きな事件は起きないけれど、人生の岐路に立つ人間の揺れ動く気持ちや、小さな選択の積み重ねが、やがてひとつの人生をつくっていく。そのことを、静かに教えてくれる作品だったと感じています。 

☆☆☆

鑑賞日: 2016/07/09 TOHOシネマズ川崎

監督ジョン・クローリー 
脚本ニック・ホーンビィ 
原作コルム・トビーン 
出演シアーシャ・ローナン 
ドーナル・グリーソン 
エモリー・コーエン 
ジム・ブロードベント 
ジュリー・ウォルターズ

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