映画【エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス】感想(ネタバレ):話題のマルチバース映画を体験!母と娘の関係が織りなす壮大な映像体験

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●こんなお話

 多元宇宙でいろんな自分がいて世界を救ったり娘と関係改善したりする話。

●感想

 コインランドリーを営む女性が主人公。日々の生活は目まぐるしく、家族の問題や仕事の悩みに追われながら、慌ただしい毎日を送っている。夫は密かに離婚届を書き始め、認知症気味の父の介護にも追われる。娘は同性の恋人を連れてきて、自分なりの人生を歩み始めている。そんな中でも、コインランドリーには次から次へとわがままなお客さんがやってきて、主人公の心の余裕はどんどん削られていく。

 ある日、家族全員で国税局に出向く場面から物語は急展開を迎える。税務署の窓口で手続き中、いつもの夫が突如として“別の夫”のように変貌し、謎めいたアドバイスと一枚のメモを主人公に手渡す。そのメモ通りに動いてみると、彼はなんと別の次元からやってきた存在で、主人公に「世界を救ってほしい」と依頼してくる。

 ここから、主人公の世界はまるで万華鏡のように激変していく。次元を超えた旅が始まり、あらゆるパラレルワールドへと飛び込んでいくことに。国税局のオフィスを舞台に、突然のカンフーアクションが展開されたり、突拍子もない行動によって別の能力を身につけたりと、観ていて驚かされる展開が続く。

 ジャンプした先の次元では、指がソーセージのようになっている世界や、自分が映画スターとして生きている世界、さらには石に意識が宿ったかのような無音の世界など、目まぐるしい展開が続いていく。それぞれの世界には、それぞれの自分が存在し、そのすべての姿を通して、彼女は「本当の自分とは何か」を探していくような旅に出ることになる。

 ベーグルが世界を飲み込む…という一見すると冗談のような、けれどどこか哲学的なモチーフもあり、その中で娘との関係性にも変化が訪れる。世界を旅し、時に笑い、時に涙しながら、主人公は少しずつ変わっていく。最終的には娘の交際相手を認め、過去のしがらみにとらわれることなく前に進もうとする。税務署での問題にも現実的に向き合い、書類の修正提案を受け入れて人生の調整も済ませていく。

 この作品は、2時間20分という長尺の中で、ジャンルの枠を自在に飛び越える大胆さと、編集や演出の勢いに圧倒される映画でした。ミシェル・ヨーさんの真剣な演技や、キー・ホイ・クァンさんの優しさに満ちた存在感、そしてジェームズ・ホンさんの年齢を感じさせない元気な姿にも胸を打たれます。

 ただ、正直に申し上げますと、あまりにも場面転換や演出の勢いが激しすぎて、話の流れを追うことに必死になってしまいました。テンポの速さや編集の派手さに目を奪われる一方で、物語の核となる母娘の和解や家族のドラマにはあまり心が動かされなかったというのが率直な感想です。

 奇抜な設定やギャグの連続には少し戸惑いもあり、笑うべきかどうか判断に迷う瞬間も多かったです。アクションシーンもあまり盛り上がることなく過ぎてしまい、各次元のビジュアルの変化にしても、印象が薄く感じられました。特にアクション映画として楽しみにしていた部分は、あまり熱中できず、淡々と眺めてしまったというのが正直なところです。

 とはいえ、現代社会で悩みながらも懸命に生きる一人の女性が、無数の選択肢の中で自分の軸を見つけていくというテーマには心惹かれるものがありました。混沌とした映像の中にも、静かに流れる人生の再構築が感じられた作品だったように思います。

☆☆

鑑賞日:2023/03/12 シネマサンシャイン平和島

監督ダニエル・クワン 
ダニエル・シャイナート 
脚本ダニエル・クワン 
ダニエル・シャイナート 
出演ミシェル・ヨー 
キー・ホイ・クァン 
ステファニー・スー 
ジェイミー・リー・カーティス 
ジェニー・スレイト 
ハリー・シャム・Jr 
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