●こんなお話
第二次大戦を背景にした話。
詳細ネタバレあらすじ
昭和16年春。小田島剛一は陸軍士官学校を卒業して陸軍少尉に任官され、歩兵連隊に配属される。海軍航空部隊では大門勲が真珠湾攻撃に向けた訓練を続けている。京都では、キリスト教を信仰する学生の江上孝が教会で礼拝していたところ、特高に連行されて取り調べを受ける。江上の恋人である柏木京子はその後、病気で入院する。東京の下町では、理髪店で働く小林幸吉が出征することになり、出征を前に新井美代と結婚する。二人は結婚後すぐに別れることになる。
同じ頃、日中戦争が続く中で近衛内閣が総辞職し、東条英機が内閣総理大臣に就任する。日本政府はアメリカなどとの交渉を続けるが、日米関係は悪化する。昭和16年12月、日本はアメリカとの戦争に入り、12月8日に真珠湾攻撃が行われる。大門も攻撃に参加する。
昭和17年1月、マレー半島で小田島の部隊に小林が加わる。二人は自転車部隊として南下し、日本軍はマレー半島を進撃する。戦闘を続けた日本軍はシンガポールを攻略し、昭和17年2月にシンガポールを占領する。小林は戦闘で負傷し、日本へ送還される。
日本軍はシンガポールだけでなく、ビルマ、ラングーン、ジャワなどへ進出する。しかし、昭和17年6月のミッドウェー海戦で日本軍が敗北し、その後の戦況は日本側に不利になっていく。
日本に戻った小林は負傷から回復し、再び戦地へ送られることになる。一方、江上は軍隊への入隊を決める。江上は京子との関係を残したまま入隊し、戦地へ向かう。
小田島の部隊は南方戦線を移動し、サイパンへ進む。昭和19年6月、アメリカ軍がサイパン島への攻撃を開始する。日本軍と島の日本人は戦闘に巻き込まれ、島内では日本軍の部隊と民間人が追い詰められていく。小田島はサイパンにいた料亭の女将・国吉靖子や小林らと行動する。日本側では玉砕する者が相次ぎ、小田島たちは戦闘地域を移動しながら生き残る。
サイパンで日本軍の抵抗が続く中、アメリカ軍は日本兵や民間人に投降を呼びかける。小田島たちのいる場所でも投降をめぐる出来事が起こる。靖子と玉江は洞窟の外へ水を取りに出た際にアメリカ軍の攻撃を受け、手榴弾で自決する。小田島は軍服から階級章を外し、小林らも同じように階級章を外す。小田島は洞窟に残る人々を小林に託して、アメリカ軍と接触するために洞窟を出る。
小田島は海岸でアメリカ軍兵士を見つけ、発砲する。その後、小田島はアメリカ軍の銃撃を受けて死亡する。サイパンでは日本軍の組織的な抵抗が終わり、日本人の多数が死亡する。
一方、フィリピンにいた江上は、京子と同じ顔をしたフィリピン人女性マリアと出会う。江上とマリアは行動をともにするようになる。フィリピンではアメリカ軍の進攻が続き、日本軍は撤退を続ける。大門もフィリピンで戦闘を続ける。現地人を日本軍の移動に同行させた後、敵に情報を伝える可能性があるとして殺害する中にマリアもその中に含まれる。マリアは大門によって殺され、江上はその場に残る。
昭和20年に入り、日本国内では3月に東京大空襲が起こり、4月にはアメリカ軍が沖縄へ上陸する。戦況が悪化する中、8月6日に広島へ原子爆弾が投下され、8月9日には長崎にも原子爆弾が投下される。同じ8月9日、ソ連が日本に宣戦布告する。
昭和20年8月、日本政府はポツダム宣言を受諾し、8月15日に玉音放送が行われる。日本は戦争を終結させる。戦争終結後、東条英機らは戦争犯罪の責任を問われ、極東国際軍事裁判が開かれる。東条英機には死刑判決が下される。
フィリピンでは、江上と大門も現地人の殺害に関する責任を問われる。大門は裁判に対して反発し、江上も戦犯として裁かれる。大門は脱走を試みるが失敗し、その後死亡する。江上には銃殺刑が言い渡される。京子は江上の助命に関わる行動を取るが、江上は処刑される。
東条英機には死刑が執行される。江上もフィリピンで銃殺される。戦後、日本へ復員する兵士が増える。小林幸吉も日本へ戻る。美代は息子を連れて疎開先で暮らしていたが、戦後の海岸で幸吉と再会する。小林は戦地から生還し、美代と再び会うところでおしまい。
●感想
アメリカとの関係が冷え込み、緊張感が高まる中、東条英機が首相に就任する場面から物語は始まります。東条首相は天皇の意思を尊重し、何とか戦争を回避しようと懸命に努めますが、アメリカからの厳しいハルノートを突きつけられたことで、状況は一変し、瞬く間に戦争へと突入していきます。東条英機が天皇に対して申し訳なさを感じ、一人涙を流すシーンは非常に印象的でした。また、アメリカが日本の暗号を解読し、あえて攻撃の口実を作り出している様子がさりげなく描かれている点も興味深かったです。
作品全体を通して、天皇の戦争責任についての議論が登場人物の台詞の中に頻繁に登場し、その問題が重くのしかかっていることが分かります。さらに、サイパン島の戦いにおける玉砕の異様さや激しさも非常にリアルに映し出されており、戦争の過酷さが胸に迫ります。
政治的なマクロの視点だけでなく、一市民の視点からも描かれていることが特徴的です。陸軍少尉、床屋の青年とその妻、大学生の青年とその恋人といった普通の人々が戦争に巻き込まれていく様子が細やかに描写されており、彼らの変化や葛藤が戦争の悲惨さとともに伝わってきます。
特に南方戦線での激しい戦闘の描写は圧巻で、敵兵の死んだふりに騙されて命を落とす場面や、現地人を利用して逃亡を図る英国軍、中国人が相手と知り「アングロサクソンからの解放のために戦っているはずではなかったか」と自問するシーン、米兵による恐怖に怯え手榴弾で自決を選ぶ民間人の姿、洞窟の中で威張り散らす軍人の態度、協力的だった現地人を証拠隠滅のために射殺してしまう悲劇的な事件など、戦場の様々な側面が細かく描かれています。民間人も兵隊も区別なく命を奪われていく光景は、戦争の残酷さを改めて認識させられました。
ただ、戦争開始から東京裁判までの流れが一気に描かれているため、どうしてもダイジェスト的な印象を受ける場面があることは否めません。また、主人公と呼べる人物が明確に存在しないため、場面ごとの展開にやや散漫さを感じるところもあるかもです。
それでも、出演者の皆様の熱演が映画全体に力強いエネルギーを与えており、観る者を惹きつける作品に仕上がっていると感じました。戦争の厳しさや人間模様を深く考えさせられる一作です。
☆☆☆
鑑賞日: 2010/09/24 DVD 2025/12/10 U-NEXT
| 監督 | 舛田利雄 |
|---|---|
| 脚本 | 笠原和夫 |
| 出演 | 丹波哲郎 |
|---|---|
| 仲谷昇 | |
| 高橋昌也 | |
| 織本順吉 | |
| 田村高廣 | |
| 浜田寅彦 | |
| 原田清人 | |
| 山本清 | |
| 清水照夫 | |
| 三浦友和 | |
| あおい輝彦 | |
| 西郷輝彦 | |
| 篠田三郎 | |
| 梅宮辰夫 | |
| 大和田伸也 | |
| 湯原昌幸 | |
| 佐藤允 | |
| 川地民夫 | |
| 小倉一郎 | |
| 関根恵子 | |
| 夏目雅子 | |
| 佳那晃子 | |
| 愛川欽也 | |
| 高沢順子 | |
| 稲野和子 | |
| 石井富子 | |
| 三鈴栄子 | |
| 有明祥子 | |
| 山田光一 | |
| 垂水悟郎 | |
| 桑山正一 | |
| 河原崎次郎 | |
| 若山富三郎 | |
| ナレーション | 内田稔 |


