映画【ラストマイル】感想(ネタバレ): 爆破テロと物流網をめぐる攻防劇

Last Mile
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●こんなお話

 爆弾事件が発生して巨大企業の物流センターとか現場の人たちが頑張る話。

●感想

 物語はブラックフライデー前夜、日本中の物流が一気に動き出すところから始まる。関東一帯を支える巨大配送拠点・西武蔵野ロジスティクスセンターを震源に、世界規模のショッピングサイト「DAILY FAST」から届いた段ボール箱が次々と爆発を起こす。 

 そのセンターに新たに赴任してきたのが、センター長の舟渡エレナ。彼女とともに現場の混乱に立ち向かうのは、チームマネージャーの梨本孔だった。稼働率を守ることが至上命令とされる物流現場の過酷な状況下で、彼らは業務を止めずに続けるという責務と、爆弾テロに巻き込まれた現実との板挟みに苦しむことになる。

 物語は刑事やドライバー、シングルマザー家庭の少女、検視官など、物流に関わる多様な人々へも視線を広げていく。低賃金と過重労働にあえぐ現場の姿、家族のために働き続ける人々の姿が描かれ、それが爆破事件の恐怖と絡み合い、現代社会の影を浮かび上がらせていた。

 次々と起こる爆破で日本中が混乱し、「犯人は誰なのか」「どうして爆弾が紛れ込んでいるのか」「目的は何なのか」「まだ爆弾はどこにあるのか」といった疑念が広がるなか、エレナと孔は物流網を守るために必死の行動を続ける。やがて5年前にセンター内で意識不明となった元チームマネージャー・山崎佑の存在が事件の背後に見え隠れし、彼の元恋人である筧まりかが犯行に関与していることが浮かび上がる。

 筧は物流システムの隙を突き、派遣社員として潜伏しながら商品に爆弾を紛れ込ませていた。彼女の目的は「愛する人を奪った社会への復讐」。物流インフラを武器に巨大企業と社会全体へ牙を剥くその姿は、社会のひずみを体現する存在として描かれる。追い詰められるなか、配達員の佐野親子が勇気を振り絞り、爆発を回避する行動に出る。ドラム式洗濯機を利用して爆弾を沈静化させ、ついに事件は収束を迎える。

 本作の魅力は、まず日本映画として爆弾テロという大規模な題材を扱い、社会のインフラを舞台にした大作感が強く打ち出されている点にあると感じました。さらに豪華キャストが揃っているのも見どころで、それぞれが存在感を発揮していました。物流センターというモチーフも面白かったです。巨大企業のブラックさも描かれていたと思います。

 ただ一方で、豪華キャストが個性的な芝居を披露する分、物語の流れが散漫に感じられる場面もありました。「あ、この人も出ている。この人も出てきた」と思うたびにそれぞれがそこそこフィーチャーされてスポットがあたるため、事件解決に向かう筋道が分かりにくくなる部分もありました。豪華さゆえにノイズが生じてしまった印象があります。また、個人的には120分という時間が長く感じられ、観ていて集中力が途切れる瞬間もありました。

 それでも、物流を舞台にしたサスペンスとしての新鮮さや、社会的なテーマを内包したスケールの大きさは際立っていて、挑戦的な日本映画であったと思います。爆弾テロを大作として描ききる試みには強い意欲を感じ、作品の存在感は十分に残りました。

☆☆☆

鑑賞日:2025/09/07 Amazonプライム・ビデオ

監督塚原あゆ子 
脚本野木亜紀子 
出演満島ひかり 
岡田将生 
ディーン・フジオカ 
大倉孝二 
酒向芳 
宇野祥平 
安藤玉恵 
丸山智己 
火野正平 
阿部サダヲ 
石原さとみ
井浦新
窪田正孝
市川実日子
竜星涼
飯尾和樹
薬師丸ひろ子
松重豊
綾野剛
星野源
橋本じゅん
前田旺志郎
麻生久美子
吉田ウーロン太
金井勇太
永岡卓也
中村倫也 
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