●こんなお話
マンデラさんが大統領に就任して、白人と黒人で分断されていたのがラグビーを通して今までの対立を赦して一体となっていく話。
●感想
物語は、南アフリカで歴史的な瞬間を迎えた1994年、大統領にネルソン・マンデラが就任する場面から始まります。長く続いたアパルトヘイト政策の終焉とともに、黒人と白人の間に横たわる深い溝が、まだ日常のあちこちに残っていることが描かれます。黒人たちは長年にわたる抑圧と差別に耐え、白人たちは新たな政権への不安に心を揺らしている。その空気の中で、マンデラは「許す」という言葉を軸に、国の未来を切り開こうとしていきます。
この映画は、その緊張の空気を背景に、マンデラの政治的手腕だけでなく、彼の人間的な深みと揺るがぬ信念を静かに、そして力強く映し出していきます。とりわけ印象的なのは、大統領付きの警護チームの再編成です。黒人の警官たちの中に、白人の元国家警察が加わることで、内部でも強い反発が生まれますが、マンデラはその混在こそが未来への一歩になると信じています。言葉よりも行動で、対立する者たちに互いの存在を認めさせていく姿に、深い敬意を抱かずにはいられませんでした。
また、ラグビーというスポーツを通じて国家の団結を目指すという展開も、非常にわかりやすく、観客の感情を自然と引き込んでいく力がありました。当時の南アフリカにおいて、ラグビーは白人のスポーツと見なされており、黒人層からの支持はほとんどなかったにもかかわらず、マンデラはその競技に未来への可能性を見出します。代表チームへの応援を呼びかける彼の姿勢が、少しずつ国民の心を変えていき、やがて試合の終盤には黒人と白人が肩を並べて声援を送るという、まさにスポーツ映画としての醍醐味が詰まった瞬間が訪れます。
大統領の支援を受けたチームも、当初は優勝など夢のまた夢というような雰囲気でしたが、選手たちがひとつになり、練習と試合を重ねるごとに変化していく様子が丁寧に描かれていきます。とくに終盤の試合シーンは迫力があり、ルールを知らなくても緊張感と興奮を共有できる構成になっていて、誰もが自然と手に汗を握って観ることができるのではないかと思います。スポーツの持つ力と、それが人々をどう変えていくのかを実感させてくれる仕上がりでした。
その一方で、限られた時間の中で物語が進んでいくためか、登場人物たちがやや早急に心を開いていく印象を受ける場面もありました。対立していた人々が一気に和解へと進んでいく流れに、もう少し段階的な葛藤や衝突があれば、より深みが出ていたのではと感じる部分もございます。とはいえ、130分という枠の中で南アフリカという国の再出発を描こうとした構成としては、十分にバランスが取れていたとも思います。
全体を通して、過去の傷と向き合いながらも未来を信じようとする姿勢が貫かれていて、感動的でありながらも冷静に語りかけてくるような映画でした。教科書的とも言えるほどに整理された内容ではありますが、その真っ直ぐな語り口が逆にこの物語にふさわしく、誰もが知っておくべき歴史の一面を、映像としてしっかり伝えてくれる作品だったと感じました。
☆☆☆☆
鑑賞日: 2019/09/21 NETFLIX
監督 | クリント・イーストウッド |
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脚本 | アンソニー・ペッカム |
原作 | ジョン・カーリン |
出演 | モーガン・フリーマン |
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マット・デイモン | |
ザック・フュナティ | |
グラント・L・ロバーツ | |
トニー・キゴロギ | |
マルグリット・ウィートリー | |
スコット・イーストウッド | |
ラングレー・カークウッド | |
ボニー・ヘナ | |
ショーン・キャメロン・マイケル | |
ジュリアン・ルイス・ジョーンズ |
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