●こんなお話
夏休みの補習でプール掃除をさせられる学生さんたちの話。
●感想
夏の陽射しが照りつける高校のプール。水のないその底に、野球部のグラウンドから飛んできた砂が積もっていた。高校2年生のココロとミクは、体育教師に言われて夏休み中の補習としてプール掃除を任されることになる。渋々ながらもデッキブラシを手に、二人は黙々と作業を始める。
そこに、水泳部に所属するチヅルと、すでに引退したユイが加わる。4人は並んで作業をしながら、学校生活や恋愛、メイクの話題、将来のことなど、どこにでもあるような日常の会話を重ねていく。話すうちに、それぞれが抱える不安や孤独が少しずつ顔を出す。
ココロは自分がどう見られているかに敏感で、友人との距離感に揺れている。ミクは誰かと一緒にいながらも、どこかに居心地の悪さを感じている。チヅルは水泳部でのプレッシャーに押され、ユイは引退してからの空虚さを抱えていた。彼女たちはただ掃除をしているだけなのに、どこか心の奥に沈んだ感情が水面のように静かに揺れていく。
先生もまた、生徒たちと同じように生きづらさを吐露する。規則や常識の中で自分を縛ってしまうこと、そして野球部のエースへの淡い恋心。生徒たちの前では大人を演じながら、心の中では誰よりも不器用な一人の人間として存在していた。野球部のマネージャーへの複雑な思い、阿波踊りを踊るかどうかをめぐる何気ない会話、男子と女子の違いについて語る場面も重なり、夏の午後の空気のようにゆっくりと時間が流れていく。
しかし、物語としては大きな事件が起きるわけでもなく、淡々とした日常が続いていく。プール掃除の水音と野球部の遠くの練習、そして彼女たちの声だけが響く。正直に言うと、彼女たちの会話がどこか遠くに感じられてしまい、内容が心に残ることは少なかったです。見ている間は、いつ掃除が終わるのだろうとふと思ってしまう瞬間もありました。それでも、夏の午後に流れる倦怠感や、若さゆえの閉塞感のようなものは画面から伝わってきました。何も起きない時間の中に、彼女たちがそれぞれの居場所を探している姿が印象に残りました。
☆☆
鑑賞日:2025/10/05 U-NEXT
監督 | 山下敦弘 |
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脚本 | 中田夢花 |
脚本協力 | 小沢道成 |
原作 | 中田夢花 |
出演 | 濱尾咲綺 |
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仲吉玲亜 | |
清田みくり | |
花岡すみれ | |
三浦理奈 | |
さとうほなみ |