●こんなお話
人間狩りが行われて狩る方、狩られる側のそれぞれの視点の話。
●感想
ある女性がグループチャットを通じて「人間狩り」のような恐ろしいやりとりを行っているシーンから幕を開けます。その後、場面は飛行機の中に移り、上空で高級シャンパンを楽しんでいた男性が目覚めて突然暴れ出します。そこに現れた「石」と名乗る男が、あたかも説得するかのように接近したのち、彼を刺殺するという衝撃の展開。
続いて、森の中で目を覚ます女性。彼女は猿ぐつわをされ、同じ状況の男女が周囲に大勢いることに気づきます。中央には武器が大量に入った箱が設置されており、それに気づいた矢先、突如銃撃が始まります。人々は混乱に陥り、主人公格と思われた女性も撃たれてしまい、助けてくれた男性も地雷を踏んで命を落とします。
わずかに生き残った3人が近くのコンビニのような場所に逃げ込み助けを求めますが、店主夫妻がまさかの加害者側で、銃撃やガス攻撃で彼らを次々と殺害。そこにようやく真の主人公が現れ、容赦なく店主夫妻を始末します。
その後、主人公は他の生存者と合流し、列車での移動中に“難民”として乗車していた人々と出会います。しかし待ち受けていた軍が彼らを「保護」するという名目で連行する中、主人公たちも“大使館職員”を名乗る人物たちに保護されます。しかし、主人公はその正体を見抜き、車中で一気に全員を抹殺。そのまま元の“狩り”の場所へと車を走らせます。
一方、現地では狩りを主催した富豪たちが談笑しながら様子を見守っていましたが、そこに主人公が単身突入し、壮絶な戦闘の末、全員を皆殺しにしてしまいます。物語の終盤では、唯一生き残っていた黒幕の邸宅へ向かい、彼と対峙。その回想で明かされるのは、かつてグループチャットの発言が流出し、社会的に糾弾されたことで職を失った黒幕の過去。この事件をきっかけに、富豪たちが報復として「人間狩り」を本当に始める決意をしたという裏話が語られます。
最終的に主人公と黒幕が一騎打ちを繰り広げ、主人公が勝利。彼は敵の服を身にまとい、プライベートジェットに乗り込み、上空で高級ワインをラッパ飲みする結末。
序盤からテンポが非常に早く、誰が生き残るか全く予想がつかない展開が続き、サバイバルスリラーとしてのスリルと緊張感が際立っておりました。人体の破壊描写も大胆で、ショッキングなはずがどこか爽快に感じてしまうほど。とくに「今日が誕生日なの」と口にした女性の衝撃的な最期には、思わず笑ってしまうようなブラックユーモアも光っていました。
中盤からは狩る側の視点に切り替わり、世界観が徐々に明かされる構成。そこにふらっと現れる主人公の圧倒的な戦闘力と冷静な判断が状況を一変させ、一気にカタルシスが高まる展開も印象的でした。
ただ、終盤に差し掛かるにつれてテンポがやや落ち込み、黒幕の動機などが説明的な台詞で処理されるため、若干の退屈さを感じる部分もございました。特に「ウサギとカメ」の話を長々と語る場面は、テンポの良さが損なわれてしまった印象です。クライマックスのガールズファイトもパワフルではありますが、やや既視感があり、目新しさには欠ける部分がありました。
それでも、“人間狩り”というジャンルに「リベラル vs 保守」という現代的な社会対立を組み込み、風刺的かつ刺激的に描いた作品として、非常に楽しめました。深読みのしがいもあり、アクション映画好きにも、社会派スリラーを好む方にもおすすめできる一本です。
☆☆☆
鑑賞日:2020/11/09 TOHOシネマズ日比谷 2024/10/23 Amazonプライム・ビデオ
監督 | クレイグ・ゾベル |
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脚本 | ニック・キューズ |
デイモン・リンデロフ |
出演 | ヒラリー・スワンク |
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ベティ・ギルピン | |
エマ・ロバーツ | |
アイク・バリンホルツ | |
ウェイン・デュヴァル | |
イーサン・サプリー |