映画【天空の蜂】感想(ネタバレ):巨大ヘリが原発を狙う緊迫のサスペンス

Tenkû no hachi
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●こんなお話

 高速増殖炉の上に操られた巨大ヘリコプターがホバリングして墜落させると脅迫してきて、それに対応する人たちの話。

●感想

 航空自衛隊向けに開発された日本最大級の最新鋭大型ヘリコプター「ビッグB」の完成披露式典が、愛知県にある錦重工業小牧工場で開かれようとしていた。長年この機体の開発に携わってきた技術者・湯原一彰も会場に訪れており、妻と幼い息子の高彦を連れて式典を見学している。巨大ヘリの完成を祝う華やかな雰囲気の中、関係者たちは試験飛行の準備を進めていた。

 しかしその最中、誰も操縦していないはずのビッグBが突然エンジンを始動し、機体は格納庫を飛び出してそのまま空へ飛び立ってしまう。完全に無人のはずの機体だったが、内部には湯原の息子・高彦が残されたままだった。

 ビッグBは遠隔操作によって日本海側へ向かい、福井県にある新陽原子力発電所の上空へ到達する。そして原子炉の真上約800メートルの位置で静止し、巨大な機体が発電所を覆うようにホバリングを続ける。

 しばらくして電力会社、政府機関、警察、そして報道機関へ同時にFAXが送りつけられる。そこには「天空の蜂」と名乗る犯人からの声明が記されていた。

 犯人はビッグBの内部に爆発物を仕掛けたと宣言し、日本国内すべての原子力発電所の即時停止と廃炉、さらに建設中の原発計画の全面中止を要求する。もし要求に応じなければ、この巨大ヘリを原子炉に墜落させると警告する。機体の燃料が尽きるまでの8時間がタイムリミットとされ、日本全体を巻き込む巨大テロ事件が発生する。

 さらにヘリの内部には少年が取り残されていることが判明し、原発事故の危機と人命救出という二つの問題が同時に突きつけられる。

 対策本部が設置され、ビッグBの設計者である湯原一彰が呼び出される。彼は機体の構造や性能を説明しながら、遠隔操作によって完全に制御されている現状を分析する。

 同時に、新陽原子力発電所の設計に関わった技術者・三島幸一郎も現地へ呼ばれる。三島は原子力を日本の未来を支えるエネルギーと信じて開発に携わってきた人物であり、ヘリが墜落した場合の被害想定を説明する。原子炉の建屋は強固だが、使用済み核燃料プールなど施設の一部は衝撃に弱い構造となっており、そこにヘリが落下した場合には大規模な放射能災害につながる危険性があると明らかになる。

 対策本部では自衛隊による撃墜案も検討されるが、爆発物がある可能性や落下位置を制御できない問題から実行は困難と判断される。

 一方、警察と公安は犯人の正体を追い始める。捜査の結果、原子力政策に強い反発を抱いていた雑賀という男の存在が浮かび上がる。雑賀はかつて原発事故で家族を失った過去を持ち、原子力行政への怒りから過激な思想を抱くようになっていた。

 現場では少年救出作戦も進められる。自衛隊はヘリの真横に接近する危険な空中作戦を決行する。別のヘリから隊員が接近し、機体から落下する高彦をギリギリのところで空中キャッチすることに成功する。少年は無事救出されるが、ビッグBは依然として原発上空に留まり続けている。

 その頃、警察は雑賀の潜伏先を突き止めるが、彼は自宅に爆弾を仕掛けており、警察を翻弄する。その過程で、事件の実行に深く関わっていた人物が三島幸一郎であることが判明する。原発設計者でありながら原子力政策の危険性を強く感じるようになった三島は、雑賀と協力して今回の計画を実行していた。

 三島は湯原と車の中で激しくもみ合いになり、その末に警察に逮捕される。

 残り時間がわずかとなる中、湯原は救出された高彦からヘリ内部の様子を聞き取る。リモコン装置や内部機器の情報をもとに、ビッグBの構造を利用すれば遠隔操作を一部奪い返せる可能性があると気づく。

 湯原は機体の操縦系統の特徴を分析し、わずかな制御を取り戻す作戦を提案する。対策本部はこの危険な試みに賭けることを決断し、遠隔操作の制御を少しずつ書き換えていく。

 その結果、ビッグBはゆっくりと原子炉の上空から移動し、原発への墜落は回避される。巨大事故は寸前のところで防がれ、日本中を揺るがしたテロ事件は収束する。

 そして年月が流れ、かつてヘリに取り残されていた少年・高彦は成長し、航空自衛隊の救難隊員として空で人命救助に携わるようになっていておしまい。


 巨大ヘリが原子力発電所の真上に止まり続けるという大胆な設定から始まり、国家規模の危機を描いていくスケールの大きなエンターテインメント作品でした。冒頭のビッグBが突然飛び立つ場面から一気に緊張感が高まり、そのまま原発上空でホバリングするという展開は強烈なインパクトがあります。

 事件を止めようとする政府や警察、原発施設で対策に奔走する技術者たち、犯人を追う捜査班、そして犯行を実行する側の人物たちと、さまざまな視点から物語が同時進行で描かれていく構成は非常に見応えがありました。限られた時間の中で状況が次々と変化していくため、観ている側も常に緊張感を抱きながら展開を追うことになります。

 一方で、原子力発電の構造や専門的な仕組みを説明する必要があるため、登場人物たちが長いセリフで説明を続ける場面が多く、物語のテンポが少し落ちてしまう印象も受けました。後半の真相が明らかになっていく過程では、登場人物それぞれが自分の立場や信念を語る場面も多く、サスペンス映画としての緊迫感がやや薄れてしまう瞬間もあります。特に主人公の家庭事情や、原発に対する思想を語るシーンなどは丁寧に描かれている反面、140分という上映時間の長さを体感させる部分でもありました。

 それでも江口洋介さん、本木雅弘さんをはじめとした豪華な俳優陣が次々に登場し、大規模なセットや航空シーンなど画面の迫力は日本映画としてかなり豪華です。巨大ヘリ、原発施設、国家規模の危機という題材を真正面から扱った日本のエンターテインメント大作として楽しめる作品でした。

☆☆☆

鑑賞日: 2016/03/11 Blu-ray 2026/03/07 U-NEXT

監督堤幸彦 
脚本楠野一郎 
原作東野圭吾
出演江口洋介 
本木雅弘 
仲間由紀恵 
綾野剛 
柄本明 
國村隼 
石橋蓮司 
竹中直人 
向井理 
佐藤二朗 
光石研 
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