映画【52Hzのラヴソング】感想(ネタバレ):音楽で紡ぐ多様な恋模様

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●こんなお話

 バレンタインデーの1日にいろんな人の恋愛模様の話。 

●感想

 バレンタインデーの朝、台北の街では恋人を求める人々がそれぞれの思いを胸に一日を始めており、花屋で働くシャオシンは次々と舞い込む花束の注文に追われながらも、自分には一緒に過ごす相手がいない現実に小さな孤独を感じていた。

 同じ頃、パン職人のシャオアンは長年想いを寄せてきたレイレイに特別なチョコレートを渡そうと決意し、バレンタインの配達に出かけるが、配達中にシャオシンの車と接触事故を起こしてしまい、成り行きで二人は互いの配達を手伝い合いながら街を回ることになる。

 最初はぎこちなかった二人の会話は、移動を重ねるうちに少しずつほぐれ、恋人がいない不安や自分に自信が持てない気持ちを語り合う中で、不思議な連帯感と親近感が芽生えていく。

 その一方で、10年以上交際を続けてきたダーハーとレイレイは、同じ朝を迎えながらも心はすれ違っており、レイレイは関係を終わらせる決意を抱え、ダーハーはプロポーズを考えるという真逆の思いを胸に秘めていた。

 台北の街では彼ら以外にも、恋人がいないことに焦りを感じる若者、売れない歌手として将来に悩む人物、同性婚を控えたレズビアンカップル、老年期に差し掛かって新たな恋に戸惑う男女など、さまざまな立場の人々がそれぞれの恋愛と人生に向き合っている。

 物語はバレンタインデーの一日という限られた時間の中で進行し、登場人物たちは心の内にある期待や不安、後悔や願いを、街角や職場、家の中で歌として表現しながら自分自身と向き合っていく。

 シャオシンはシャオアンの不器用ながらも真っ直ぐな優しさに触れ、誰かに想いを寄せられることへの戸惑いと喜びを同時に知り、シャオアンもまた自分の気持ちを言葉にする勇気を少しずつ得ていく。

 ダーハーとレイレイは、これまで積み重なってきた日々を振り返りながら、共に歩み続けるのか、それぞれ別の道を選ぶのかという現実的な選択を迫られる。

 夜になり、街がライトアップされる頃、人々はそれぞれの場所で想いを確かめ合い、孤独だと感じていた声もまた誰かに届く可能性があることを実感していく。

 映画は、他のクジラには声が届かないとされる52Hzの周波数を象徴として用いながら、恋に不器用な人々の声が決して無意味ではないという思いを重ね合わせ、音楽とともにそれぞれの未来への一歩を描き出して物語はおしまい。


 本作は上映時間の大半が歌で構成されるミュージカル映画で、現実の台北というよりも、原色を多用したポップで洗練された世界観が印象に残りました。映像のデザインは非常に華やかで、楽曲も耳に残りやすく、音楽の持つ力は素直に楽しめるものだと感じました。

 一方で、群像劇という構成上、明確な主人公が存在せず、多くの登場人物のエピソードが並行して描かれるため、誰か一人に深く感情移入するのは難しかったです。恋愛をテーマにしていながら、登場人物の内面がやや表面的に感じられ、好意を抱ける人物が見つけにくい点は惜しく感じました。

 恋人がいないことへの焦り、将来に対する不安、長年続いた関係の停滞、合同結婚式でのカップルの選択、老年の恋といった多彩な題材が提示されるものの、それぞれが歌として語られる一方で、具体的にどのように困難を乗り越えていくのかが十分に描かれているとは感じにくかったです。

結果として、おしゃれで軽快な映像と音楽の中に、物語としての密度の薄さが際立ってしまい、ミュージカルとしての楽しさとドラマとしての満足感の間に距離を感じる作品でしたが、映像や楽曲を中心に楽しみたい方には一定の魅力がある映画だと思いました。

☆☆

鑑賞日: 2018/12/19 DVD 2026/01/03 U-NEXT

監督ウェイ・ダーション 
脚本ウェイ・ダーション 
ヨウ・ウェンシン 
スー・ダー 
出演リン・ジョンユー 
ジョン・ジェンイン 
スミン 
チェン・ミッフィー 
リン・チンタイ 
シンディ・チャオ 
リー・チエンナ 
チャン・ロンロン 
ファン・イーチェン 

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