力を欲する人間たちの思惑を利用し、荒廃世界で魔女がすべてを掌で転がす話。
●こんなお話
文明が崩壊し秩序という概念が失われた世界「ロストランズ」は、力を持つ者だけが生き延びる無法地帯となっており、宗教と王権が歪に支配する閉塞した社会が広がっている。かつて異端の魔女として捕らえられたグレイ・アリスは、処刑台に吊るされながらも相手に幻覚を見せる自身の魔力によって死を回避し、以後は人里を離れた荒野で孤独に生き延びていた。そんな彼女のもとに、変身する獣の力を欲する王妃から密命がもたらされる。それはロストランズ最奥部に棲む獣を倒し、その力を持ち帰るという危険な依頼だった。
アリスはこの旅を成し遂げるため、腕は確かだが過去を多く語らない流浪の戦士ボイスを雇い、二人は契約関係としてロストランズへ足を踏み入れる。そこは死の土地であり、荒野や廃墟、かつて栄えた文明の遺構を越えながら進む旅は常に命の危険と隣り合わせだった。教会は魔女であるアリスを危険視し、異端審問官と兵士たちを差し向けて執拗な追跡を行い、二人の行く先々で流血と犠牲が生まれていく。
旅の中で、アリスは幻覚や魔術を用いて敵を翻弄し、ボイスは圧倒的な戦闘力で彼女を守り続ける。雇用関係として始まった二人の関係は、極限状況を重ねるうちに変化し、互いに踏み込まない距離を保ちながらも、信頼と複雑な感情が静かに芽生えていく。しかしロストランズの過酷さはそれを容赦なく引き裂き、途中で出会う仲間や無辜の人々が犠牲となり、力を求める行為そのものが新たな悲劇を生むことが強調されていく。
やがて二人は変身する獣の棲む地へ辿り着き、その正体が人と獣の狭間で生きる存在であることを知る。獣との死闘の末、アリスはその力を得ることが王妃の望みでありながら、それが別の破滅を招く危険を孕んでいると悟る。教会の追っ手との最終的な対峙を経て、アリスは王妃の依頼、魔女としての宿命、そしてボイスとの関係を天秤にかけ、すべてを掌の上で操るように選択を下し、結果として旅の始まりから終わりまでが彼女の思惑通りであったことが静かに示されておしまい。
冒頭のデイブ・バウティスタによる語りと、ミラ・ジョヴォヴィッチ演じる魔女が処刑台に立つ場面から始まる構成は印象的でしたが、物語の全体像を掴むまでに少し時間がかかりました。誰の視点で、何を描こうとしているのかが分かりにくく、序盤は戸惑いながらの鑑賞となりました。
アクションシーンは数多く用意されているものの、演出や緊張感に乏しく、盛り上がりに欠ける場面が多かった印象です。王妃と警護隊長、教会が支配する世界観や権力構造も説明が十分とは言えず、魔女であるアリスの立ち位置や脅威度が最後まで掴みにくかった点は気になりました。
アリスが非常に強大な存在として描かれている一方で、ボイスを雇って旅をするという展開には違和感もあり、二人の感情の変化や関係性がやや曖昧に感じられました。狼男の正体についても意外性は控えめで、物語上の意味が伝わりにくかったため、終盤の選択に感情移入しづらい部分が残りました。
ただし、CGを多用した荒廃世界のビジュアルや、人工的な質感を強調した背景には独特の魅力があり、ポール・W・S・アンダーソン作品らしい世界観表現として印象に残りました。
☆
鑑賞日:2026/01/04 イオンシネマ座間
| 監督 | ポール・W・S・アンダーソン |
|---|---|
| 脚本 | コンスタンティン・ヴェルナー |
| 原作 | ジョージ・R ・R ・マーティン |
| 原案 | ポール・W・S・アンダーソン |
| コンスタンティン・ヴェルナー |
| 出演 | ミラ・ジョヴォヴィッチ |
|---|---|
| デイヴ・バウティスタ | |
| アーリー・ジョヴァー | |
| アマラ・オケレケ | |
| フレイザー・ジェームズ |

