●こんなお話
人気ユーチューバーみたいな肉体派な主人公が政府の諜報員にスカウトされて頑張る話。
●感想
映画の冒頭、政府関係者が「悪には悪を」とばかりに各地から危険な人間たちをスカウトしてくるシーンがとても印象的でした。極悪な人物たちを集めて、ある種のテストのような任務を与えるというアイデア自体がユニークで、他の作品ではあまり見かけない展開だったと思います。観客にとっても、「この先どんな任務になるのだろう」と期待を膨らませるきっかけになっていたと思います。
最初の山場では、スカウトされた主人公たちが模擬訓練のつもりで乗り込んだ任務が、実はリアルな麻薬カルテルとの接触だったというどんでん返しがあります。そして、そのまま本物の銃撃戦に巻き込まれ、政府軍とカルテルの間で激しい攻防に発展します。中でも、バイクとヘリコプターが入り乱れる派手なチェイスシーンは見応えがあり、映像としてもスピード感がありました。序盤の勢いで一気に作品世界に引き込まれた方も多かったのではないかと思います。
ただ、そこから物語が本筋である潜入捜査へと移行していくと、テンションが一段落してしまいます。主人公がロシア人犯罪グループに潜り込む過程は、これまでの勢いからするとややトーンダウンしてしまった印象がありました。悪党の中にさらに悪党を潜入させる、という「悪が悪を裁く」という構図は面白くなりそうな要素でしたが、残念ながら潜入先での緊張感はあまり感じられず、ストーリー上も淡々と進んでいく印象を受けました。
たとえば、バレるかもしれないというハラハラ感や、敵の目をかいくぐるスリリングな展開などがあまり描かれないまま、主人公がいとも簡単にグループに溶け込んでしまいます。そのため、潜入捜査ならではのサスペンス性を期待していた観客には少し物足りなく映ったかもしれません。
また、女性キャラクターとのロマンス描写が入り、そこで物語が停滞してしまうのもテンポを鈍らせる要因だったように思います。キャラクター同士の掛け合いももう少し個性が強ければ、展開のゆるさを補ってくれたのかもしれません。
とはいえ、アクションシーンそのものは終始ハイレベルで、スタントマンの体を張ったパフォーマンスには目を見張るものがありました。銃撃戦、格闘、逃走劇など、バリエーション豊かなアクションが配置されており、それぞれに迫力は感じられます。雪山での雪崩からの脱出シーンなどは特にスリルがあり、映像としての魅力も十分にあったように思います。
しかし、アクションの勢いが終盤にかけてやや失速していく感覚も否めませんでした。クライマックスでの敵との決着が想像以上にあっさりしていて、もう少し丁寧な対決が描かれていれば、余韻のある終わり方になったのではと感じました。
それでも、全体を通して見ると、130分という長さの中に多くの見どころが詰め込まれており、アクション映画としての魅力はしっかり伝わってきました。王道のスパイアクションや潜入ものとは一味違った構成と演出がなされていて、ジャンル好きの方には楽しめる1本だったのではないかと思います。
☆☆☆
鑑賞日: 2015/08/22 Hulu
監督 | ロブ・コーエン |
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脚本 | リッチ・ウィルクス |
出演 | ヴィン・ディーゼル |
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アーシア・アルジェント | |
マートン・コーカス | |
サミュエル・L・ジャクソン |