映画【ヘル・レイザー】感想(ネタバレ):欲望と罪が交錯する、異形の愛と再生のドラマ

Hellraiser
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●こんなお話

 悪魔のボックスを開いて蘇った不倫相手の身体が完全復活するまで殺人をする奥さんとそれに気づいた娘さんとかの話。

●感想

 男がボックスを開き、何かに祈るような仕草をしていると、不気味な存在が姿を現す。悪魔のような姿をしたその存在は、異様な雰囲気をまとっていて、そこから物語が大きく動き始める。

 ある夫婦が新たな家に引っ越してくる。奥さんが屋根裏を訪れると、そこでかつての不倫相手だった夫の弟と再会する形になり、過去の出来事が彼女の中でよみがえる。夫が偶然にも手を負傷し、その血が床に滴ったことをきっかけに、死んでいたはずの弟が再びこの世に姿を現す。

 弟は生き返るためにはさらなる血が必要だと奥さんに語り、奥さんはその頼みに応えて街で男を誘惑し、屋敷へと連れ帰って殺害。その血を復活途中の弟に与えていく。奥さんの様子に不審を抱いた夫が彼女を観察し始め、さらに娘も母親の異常に気づいて後をつける。屋敷で目撃したのは、血まみれの男と、その背後で繰り返される惨劇だった。

 娘は恐怖に駆られて例のボックスを持ち出し、開いてしまう。すると再び異形の存在たちが現れ、「契約」のようなやりとりが始まる。彼女が屋敷に戻ると、そこにいたのは父親ではなく、姿を変えた伯父だった。混乱の中、父親は殺されてしまい、娘は逃げ惑う。

 追い詰められたその時、悪魔のような4人組が現れて、蘇った伯父を引き裂く。屋敷は混乱と悲鳴の渦に包まれ、物語は一つの頂点を迎える。

 頭に無数のピンが刺さったキャラクターや、ぶよぶよとした体型の異形など、登場する存在のビジュアルインパクトがとにかく強く、80年代スプラッタ映画の真骨頂という印象を受けました。こうした造形の力強さは、ホラー映画において特に記憶に残る部分で、今見ても画面に釘付けになります。

 また、床に垂れた血液から、骨や筋肉が生え、徐々に人間の身体が再生されていくプロセスを特殊効果でじっくりと見せてくれるのも見どころの一つでした。筋肉だけの姿から皮膚が薄く張り始めていく様子などは、単純にグロいというだけでなく、手間をかけて作り上げた映像として見応えがありました。

 釣り針が肌に突き刺さって皮膚が引き裂かれる描写も徹底していて、こうした痛みの演出に対するこだわりは今の作品にはない味わいを感じました。単なるホラーにとどまらず、肉体と精神の境界線を問うような一面も垣間見えた気がします。

 ストーリー面では、ボックスや契約という概念についての説明が少なく、やや観客に委ねられた部分が多い構成でしたが、それもまた本作の余韻となって残ります。不倫という関係性からくる肉欲と罪の意識、そこに死の再生というテーマが重なり合い、人間の弱さや欲望がホラーとして形になっていく過程が興味深かったです。

 奥さんが不倫相手の復活を願って、殺人を繰り返していく姿にも、快楽と罪悪感のせめぎ合いが感じられて、キャラクターの内面を丁寧に演じている俳優陣の熱演にも引き込まれました。

 終盤、娘につきまとう不気味なホームレスが、実は人間ではなかったとわかる描写や、突然火に包まれて変身する場面など、こちらが想像を超える展開が続いていて、ストーリー全体の解釈にはやや知識が求められる印象もありましたが、80年代ホラーとしての勢いを大切にした演出には見応えがありました。

 教養や世界観の背景知識があればさらに深く楽しめると思いますが、単純に映像体験として見てもインパクトのあるシーンの連続で、ホラー映画として満足度の高い一本でした。

☆☆☆

鑑賞日:2023/02/02 WOWOW

監督クライヴ・バーカー 
脚本クライヴ・バーカー 
原作クライヴ・バーカー 
出演アシュレー・ローレンス 
アンドリュー・ロビンソン 
クレア・ヒギンズ 
ロバート・ハインズ 
オリヴァー・スミス 
ショーン・チャップマン 
アントニー・アレン 
レオン・デイヴィス 
マイケル・キャシディ 
ケネス・ネルソン 
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