●こんなお話
拉致監禁された主人公が脱出しようとする話。
●感想
画面が暗転し、静かにオープニングが始まったと思えば、「○○年前」「○○日前」といったテロップが立て続けに挿入され、時間軸がどこにあるのかがつかみにくい幕開けとなっています。前作で主人公の身に起きた出来事や背景はある程度明かされていましたが、今回の物語は、工場のような場所に監禁された状態からスタートしていきます。
主人公が歩いていると、突然どこからともなく叫び声が響き、そのたびに謎めいた人物とのやり取りが始まります。ただ、その絡みもそれほど緊張感があるわけではなく、どこか淡々としたテンポで進み、似たような展開が何度も繰り返されていく構成です。
物語の設定としては、主人公の体内には“クイーン”と呼ばれる虫が寄生しており、共に行動する青年には“キング”の虫が宿っているとのこと。そして、2人のあいだに子どもが生まれれば、それによって完全な生命体が完成するとされています。この奇妙で生々しい設定が明らかになるものの、話の展開としては、主人公たちが工場内を歩き回るシーンが延々と続き、カメラ越しに見守る科学者たちの様子が繰り返し映される構成が続きます。
登場人物の動きに大きな変化が少ないことから、映像面でもう少しバリエーションがあれば印象が変わったかもしれません。特に、主人公の妹が登場するシーンでは、不思議な映像表現が続く一方で、展開自体は大きく進まず、もったいぶった演出がやや長く感じられました。
クライマックス付近では、妹を使って青年と交わらせようとするという衝撃的なシチュエーションが描かれますが、主人公はそれに抵抗し、本能との間で揺れ動きながらもなんとか踏みとどまります。ずっと顔のアップが続く画作りのなかで、主人公の葛藤を描こうという意図は感じられましたが、観ている側としては少々息苦しさも覚える場面に感じました。
物語はそのまま、主人公と青年が誘惑に打ち勝ち、科学者たちもそれ以上干渉してこなくなり、ある種の終息を迎えます。決して明確な決着ではないながらも、2人の選択によって一応の解決が描かれているように感じました。ただ、もし2人が今後付き合うことになるとしたら、再び“完全な生命体”の問題が浮上するのでは…と、少し不安な想像も頭をよぎります。
全体を通して感じたのは、もう少し主人公自身がクイーンに寄生されてしまったことに対する恐怖や、抗えない本能とどのように向き合っていくか、そうした心理的なドラマが丁寧に描かれていたら、より深く入り込めたのではないかという点でした。設定そのものは非常にユニークで興味を引くものでしたので、映像や演出の面でもう一段階の盛り上がりがあれば、作品全体の印象も大きく変わったのではないかと思います。
☆
鑑賞日:2012/03/18 DVD
監督 | 金田龍 |
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脚本 | 藤岡美暢 |
小林雄次 | |
原作 | 春輝 |
出演 | 吉井怜 |
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神楽坂恵 | |
高野八誠 | |
木下ほうか | |
倉貫匡弘 | |
深水元基 | |
久保ユリカ | |
前田優希 | |
星野あかり | |
螢雪次朗 |