●こんなお話
おいちゃんが亡くなると思って葬式の準備をして騒ぎを起こしたり、ヤクザの親分の頼みを聞いて息子を探したり、豆腐屋の娘さんを好きになったりする話。
●感想
旅先で寅さんが見る、柴又のおいちゃんが臨終を迎えるという不吉な夢。心配になって電話をかけると、まさかのいたずら電話で「おいちゃんは亡くなった」と聞かされる。慌てて柴又に帰ると、おいちゃんはただ暑さでぐったり寝ていただけ。本人は元気だったが、寅さんはすでに葬式の手配までしており、とらやには花屋や料理屋まで集まってきて騒動に。いつも通りのドタバタ劇が始まる。
そんな中、舎弟がやってきて「親分が危ない」と告げる。寅さんは親分に会うため北海道へ向かう。かつての威勢は消え、寂しい大部屋のベッドで最期を迎えようとする親分。その姿にショックを受ける寅さん。親分の頼みで、生き別れた息子を探す旅に出るが、会えた息子には拒絶されてしまう。
再び病院に戻ると親分はすでに亡くなっていた。葬儀の後、寅さんはヤクザ社会にむなしさを感じ、真面目に働いて生きようと決意する。しかし、就職先をあちこちで断られ、やがて姿を消してしまう。
実はとらやの目の前の豆腐屋で住み込みで働いていた寅さん。そこは母と娘が切り盛りする店で、寅さんは娘に片思い。だが彼女には恋人がいて、彼からプロポーズされ転勤先に一緒に行くことに。その際、寅さんが店で働いていたため、周囲から「跡取りになるんでしょ」と言われてしまう。
いつのまにか自分が失恋したことを知り、気持ちを整理できないまま豆腐屋も去る寅さん。結局またヤクザの世界へ戻っていく。
今回の作品は、コメディ色が強く、たとえば寅さんがすぐ後ろにいるのに周囲がその話をしていて、振り向いて初めて気づいて驚く、というような定番パターンが何度も登場し、笑いどころが満載でした。寅さんはもちろん、周りのキャラクターたちのやりとりも非常に魅力的で、90分があっという間に感じられる作品でした。
それにしても、真面目に働こうとしてもなかなか受け入れられず、恋愛もうまくいかず、結果的に居場所を見つけられない寅さんは、やっぱりどこか不器用で切ないです。でも、そんな不器用さこそが寅さんの人間味であり、笑いと哀愁を両立させるこのシリーズの最大の魅力だと改めて感じさせてくれる作品でした。
☆☆☆
鑑賞日:2023/08/04 NETFLIX
監督 | 山田洋次 |
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脚本 | 山田洋次 |
宮崎晃 | |
原作 | 山田洋次 |
出演 | 渥美清 |
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倍賞千恵子 | |
森川信 | |
三崎千恵子 | |
前田吟 | |
津坂匡章 | |
太宰久雄 | |
笠智衆 | |
長山藍子 | |
杉山とく子 | |
井川比佐志 | |
木田三千雄 | |
谷村昌彦 | |
松山省二 | |
佐藤蛾次郎 | |
谷よしの |