●こんなお話
架空の西洋の国みたいな世界の中での【忠臣蔵】な話。
●感想
物語の冒頭、主人公である騎士は、主君から刀を託され、一族の名誉と責務を継ぐように命じられる。その後、大臣に呼び出された主君は、賄賂を渡すよう強要されますが、これを毅然と拒否します。結果として、騒動が起こり、王の裁きによって大臣側の貴族が処刑されるという展開に発展します。この出来事をきっかけに、主人公を含む忠臣たちは散り散りとなり、それぞれの場所で身を潜めることになります。
一方、大臣は主人公たちの復讐を恐れ、厳重な警備体制を敷き、城の要塞化を進めていきます。主人公には監視がつけられ、周囲からは信頼を失い、日々を酒に溺れて過ごすようになります。主君の娘が売られてしまっている事実にも目を背ける始末で、その姿に監視も呆れ、最終的には警戒を解くに至る。
しかし、その瞬間が討ち入り計画の再始動開始。かつての部下たちと合流した主人公は、建築中の城の情報を収集し、ついに決起。精鋭たちと共に城に乗り込み、騎士同士の一騎打ちを繰り広げながら警備兵たちを打ち倒し、ついに仇敵である大臣を討ち取る。クライマックスでは、復讐を果たした主人公が反逆の罪で斬首刑に処されておしまい。
全体の構成は、日本の「忠臣蔵」をハリウッドの文脈で再構築で、理不尽な出来事に耐え忍んだ末に行われる“討ち入り”という展開には、胸が熱くなる要素が満載でした。義を重んじる主人公の信念や、仲間との絆、そして宿敵との対峙など、ドラマチックな要素が丁寧に織り込まれていると思います
しかしながら、映像演出の面ではいくつか気になる点も。特に、スローモーションの多用が目立ち、テンポを損ねてしまっていた印象。画面も全体的に暗く、討ち入りの場面では視認性が悪く、せっかくのアクションシーンが迫力を欠いて見えてしまいました。マントがひらひらと揺れる様子ばかりが印象に残り、実際の戦いの重みや緊張感が薄れていたように思われます。
序盤では、モーガン・フリーマンさんが登場し、大臣役として重厚な存在感を放っておりますが、長台詞で語られる内容がやや曖昧で、結局何を伝えたかったのかが明確に伝わってこない場面もありました。また、登場人物の関係性や背景がセリフによってすべて説明されてしまう点も、映像作品としてはやや興ざめでした。
中盤以降も、討ち入り計画があるにもかかわらず、主人公や仲間たちがふらふらとしており、緊張感や戦略的な展開が感じられず、全体的に間延びしている印象を受けました。クライマックスの討ち入りシーンも、登場人物たちの描き分けが不十分で、「誰が誰なのか」が分かりにくく、盛り上がりに欠ける構成となっていたのが惜しまれます。
さらに、物語の推進力が敵役の判断ミスに依存しているように見えてしまう点も気になりました。あれほど主人公を監視していた大臣側が、その監視を緩めた途端に討ち入りが始まるという流れでは、復讐の計画に知略や緻密さがあまり感じられず、主人公たちの意志の強さや練られた計画性が伝わりにくかったように思われます。
とはいえ、「忠臣蔵」という古典的なモチーフを異国風のファンタジー世界に落とし込んだ試みには魅力があり、設定自体は非常に興味深いものでした。演出面や脚本にもう少し洗練が加われば、より感情移入できる作品になったのではないかと感じました。
☆☆☆
鑑賞日: 2015/11/19 TOHOシネマズ川崎 2016/09/18 Blu-ray 2024/07/27 NETFLIX
監督 | 紀里谷和明 |
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出演 | クライヴ・オーウェン |
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モーガン・フリーマン | |
アクセル・ヘニー | |
ショーレ・アグダシュルー | |
ジェイムズ・バブソン | |
伊原剛志 | |
アン・ソンギ |
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