映画【隠し砦の三悪人】感想(ネタバレ):『燃やすか!裏切り御免!』|侍と百姓の絆が輝く時代劇の感動作

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●こんなお話

 敗れた大名のお姫様と侍大将、そして卑しい百姓2人が薪に隠した金と一緒に敵中突破するというロードムービー。

●感想

 序盤は、百姓の2人組が自分勝手な言動を繰り返し、周囲のせいにしながら自分だけが助かろうとする姿が目立ちます。その自己中ぶりが逆にユーモラスに映り、観ていて思わず笑みがこぼれました。その彼らの根性をうまく活かしつつ、姫や侍大将と共に、絶対に突破は不可能だと思われる数々の障害に挑んでいく物語が展開されます。

 次々と襲いかかる難関を、どうやって乗り越えていくのかという期待感がじわじわと高まっていきます。単に突破の方法を追いかけるだけでなく、それぞれのキャラクターが魅力的で個性豊かに描かれている点が、この作品の大きな見どころのひとつです。特に百姓たちは、逃げ回りながらもトラブルを巻き起こす役回りがコミカルで、とても印象に残ります。

 途中で仲間に加わる売られた娘の存在も物語に厚みを与えています。そして、三船敏郎さん演じる侍大将のライバル役を務める藤田進さん演じる敵方の侍との、敵味方を超えた武士道に基づくやりとりは非常に見応えがあり、侍の誇り高さと美学を感じられて胸が熱くなりました。

 全体の上映時間は130分ほどで、敵陣突破の本格的な始まりまでは60分ほどかかります。序盤の展開はじっくりと描かれており、やや長く感じる方もいるかもしれません。特に時代劇の特徴でもある一騎打ちのシーンも、現代の感覚からするとゆったりしたペースで進みます。

 しかしながら、終盤に追い詰められ、絶望的な状況のなかで「♪人の命は火と燃やせ~」という歌声が響き渡る場面は格別です。その直後に発せられる「燃やすか!裏切り御免!」のセリフの爽快感は何度観ても心が熱くなり、クライマックスの盛り上がりを力強く後押ししています。

 そして、かつては自己中心的だった百姓たちが、物語の終盤で見違えるほど善良で思いやり深い姿へと変わっていく描写も感動的でした。笑いあり、緊張感あり、そして心温まる展開ありの、まさに楽しめる映画であることを実感しました。

☆☆☆☆☆

鑑賞日: 2013/06/08 DVD

監督黒澤明 
脚本菊島隆三 
小国英雄 
橋本忍 
黒澤明 
出演千秋実 
藤原釜足 
三船敏郎 
藤田進 
上原美佐 
志村喬 

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