●こんなお話
地球の守護者のファンタスティック・フォーが地球を食べようとするエイリアンと対峙する話。
●感想
物語の舞台は、1960年代風のレトロフューチャーな世界観を持つ架空の地球「アース828」。この時点ですでに人々に知られる存在となっているヒーローチーム「ファンタスティック・フォー」が、日々の活動を続ける中から物語は始まる。天才科学者であるリード・リチャーズと、透明化やバリアを操る能力を持つスー・ストームはすでに結婚しており、間もなく第一子の誕生を迎えようとしている。彼らと共に戦うのは、スーの弟であるジョニー・ストーム、そして怪力と岩の身体を持つベン・グリム。4人はヒーローとしての使命と、家族としての時間、その両方に揺れる日常を送っていた。
しかし、突如として銀色の謎の存在「シルバーサーファー」が地球に現れることで、静かだった日々は大きく揺らぎ始める。彼は宇宙を旅する先触れとして、巨大なる存在「ギャラクタス」の到来を告げにやってきたのだった。ギャラクタスは惑星を喰らう存在であり、地球もまたその次なる標的とされていた。地球の命運がかかる中、ファンタスティック・フォーは人類を守るため、立ち上がる。
出産を控えたスーを気遣いながらも、リードは知性を駆使してギャラクタスとの交渉を試みる。宇宙へと向かい、直接ギャラクタスに会うという大胆な行動に出た彼らだったが、交渉は思いがけない条件を提示されることになる。ギャラクタスは、リードとスーの間に生まれる赤ん坊を差し出せば、地球を見逃すというのだ。この提案に対し、もちろん彼らは即座に拒絶を選ぶ。
決裂した交渉の後、追撃するシルバーサーファーと宇宙空間での激しいチェイスが繰り広げられ、なんとか地球への帰還を果たす。しかし、事態はさらに混迷を極めていく。民衆からの非難、絶望の空気、そしてギャラクタスの接近。打つ手がないようにも思われた中、リードは地球を丸ごとテレポートさせるという大胆なプランを立案。各国の首脳たちと連携を取りながら、ギリギリの希望にすがる道を模索していく。
一方で、ジョニーはシルバーサーファーが発していた謎の言語を解読し、彼女の内面やメッセージを読み解こうとする。そして物語は、赤ん坊をデコイにするという、最後の賭けともいえる奇策によってギャラクタスに立ち向かうクライマックスへと突入していく。
観ていてまず印象に残ったのは、全体に漂うレトロフューチャーの美しさでした。科学と空想の融合が描かれるそのビジュアルは、非常に魅力的だったと思います。カラフルな衣装や小道具、科学装置などもいちいち凝っていて、どこかノスタルジックで、それでいて新鮮な感覚を楽しませてくれました。
また、ギャラクタスの描写には、日本の怪獣映画にも通じるようなスケール感や威圧感がありました。特に、大魔神や劇場版ドラえもんに出てくるような美学が反映されているようにも感じられ、懐かしさと迫力の両方が映像として見事に成立していたと思います。
シルバーサーファーとのチェイスシーンも非常に印象的でした。重力の感覚を残しつつ、宇宙を舞台にした疾走感のある演出は観ていて胸が高鳴るもので、緊迫感と視覚的な美しさが両立していました。
その一方で、物語全体としてはやや地味な印象も残りました。展開に大きな驚きが少なく、淡々と進んでいく場面が続いたため、観ていて少し集中力を保つのが難しく感じられた部分もあります。中盤以降、特に話運びに抑揚が少なく、もう少しキャラクターたちの能力を活かした躍動感があれば、より引き込まれたのではないかと感じました。
それでも、キャラクターたちの関係性や内面の描写には惹かれるものがありました。とくにスーの出産という非常に個人的なドラマを、地球の存亡というスケールで描こうとした構成には、作品としてのチャレンジ精神が見えたように思います。
総じて、題材の魅力をもっと引き出せる余地があると感じつつも、視覚面やキャラクター性、そしてクラシックなSFの雰囲気に惹かれる部分は確かに存在しており、そうした要素に価値を見いだせる方には、十分に楽しめる1本だったと思います。
☆☆☆
鑑賞日:2025/07/27 イオンシネマ座間
監督 | マット・シャクマン |
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製作総指揮 | ルイス・デスポジート |
グラント・カーティス | |
ティム・ルイス | |
製作 | ケヴィン・ファイギ |
出演 | ペドロ・パスカル |
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ヴァネッサ・カービー | |
ジョセフ・クイン | |
エボン・モス=バクラック | |
ラルフ・イネソン | |
ジュリア・ガーナー | |
ポール・ウォルター・ハウザー | |
ジョン・マルコヴィッチ | |
ナターシャ・リオン | |
サラ・ナイルズ |