●こんなお話
地下洞窟で謎の生物に襲われる洞窟ダイバーたちの話。
●感想
ルーマニアの奥地、険しい山あいに人類未踏の巨大な洞窟が見つかったということで、現地に呼び寄せられたのは、世界でも有数のケイブダイバーたちだった。厳しい訓練と豊富な実地経験を積んだ彼らにとっても、これほど未知の空間はまれで、神秘と危険が同居する環境の中へと、淡々と準備を進めながら現地入りしていく。
メンバーには、主人公をはじめとする兄弟のダイバー、古くからの仲間のダイバー、そして調査チームの中心となる博士やサポートの科学者たちが含まれている。ドキュメンタリー撮影のためのカメラマンも同行し、一行は慎重に洞穴へと潜入することになる。暗く静寂な水の中、深く進むにつれて周囲の空気が次第に緊迫していくのが画面越しにも伝わってくる。
洞窟内の偵察中、先行した1人のダイバーが突如姿を消し、何者かに襲われた痕跡が残されていた。その出来事を皮切りに、洞窟には未知の肉食生物が潜んでいるのではないかと疑いが広がる。やがて、主人公の兄も襲撃を受け負傷し、その後から言動に異変が現れ始める。
しかし、極限状態の中では兄に指示を仰ぐほかなく、残されたメンバーは不安を抱えながらも行動を共にすることになる。だが、次々と仲間が謎の生物の餌食となっていくなかで、仲間たちは「襲われた者が生物に変異する」可能性に気づき始める。洞窟内に逃げ場はなく、脱出の糸口はほとんど見えない。兄は自らを囮にし、洞穴を爆破して他のメンバーの脱出を助けることを決断。主人公たちは泳ぎながら、必死に地上への帰還を目指すことになる。
終盤、兄が果たして変異していたのか、それともまだ人間としての意識を保っていたのか、主人公たちの間で議論が交わされる。そして、脱出に成功したと思われた生存者の1人が、実は変異を遂げていたことが暗示され、静かに物語は終わり。
物語の展開自体は、いわゆるジャンル映画としては定番の構成で、非常に王道的なストーリーフォーマットが採用されておりました。プロフェッショナルなダイバーたちが未知の空間へと挑み、想像を超える生物と遭遇するという、ある種お決まりの筋書きではありましたが、それゆえに安心して観られる魅力もあったと思います。
水中の映像美が非常に印象的で、カメラワークや照明の工夫によって、視覚的に新鮮な驚きを与えてくれるシーンがいくつもありました。撮影に関わったスタッフの努力や技術力の高さには、素直に感心いたしました。とくに閉所や水中という条件の厳しい場所でのカメラの動きがスムーズで、緊張感を保ちながら映像の美しさも同時に伝えていたのは素晴らしかったです。
主人公兄弟の関係性も、物語を支える大きな柱になっていたように感じます。リーダーシップを発揮し、負傷してもなお仲間を先導する兄の姿には説得力がありました。一方で、弟は終始兄に依存しており、精神的な弱さを抱えたまま物語を終えていく姿が印象的でした。そうした未熟さが人間らしさでもあると感じつつ、個人的にはもう少し内面的な変化や成長が見られてもよかったのではないかとも思います。
閉鎖空間の中で、徐々に追い詰められていく恐怖や、誰が信頼できるのか分からなくなっていく不安感、そしてさまざまな形で訪れる死とサバイバルの選択。これらの要素が丁寧に織り込まれていて、ジャンルとしての面白さをしっかり味わえる一本だったと感じています。
☆☆☆
鑑賞日: 2017/05/26 DVD 2023/09/19 NETFLIX
監督 | ブルース・ハント |
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脚本 | マイケル・スタインバーグ |
出演 | パイパー・ペラーボ |
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コール・ハウザー | |
モーリス・チェスナット | |
エディ・シブリアン | |
リック・ラヴァネロ | |
マーセル・ユーレス | |
キーラン・ダーシー・スミス | |
ダニエル・デイ・キム |
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