●こんなお話
振り込め詐欺集団と中国警察との戦いの話。
●感想
香港映画らしい緊張感とスピード感に満ちた作品で、舞台は国境を越えて広がる振り込め詐欺の現場。日本だけでなく、中国やタイでもこの犯罪が深刻な問題となっていることが、映画を通してリアルに伝わってきました。中でも、詐欺組織の“現地部隊”である「振り子」と呼ばれるグループが細かく描かれており、彼らがいかに組織的かつ巧妙に詐欺を働いているのか、その実態に驚かされました。
物語は、警察の潜入捜査官が詐欺グループの内部に入り込み、現場で操作を続けながら本部と連絡を取ろうと奮闘する姿から始まります。最新のスマートウォッチを活用して情報を伝えようとしたり、パソコンのキーボード音を合図にするなど、サスペンスの盛り上がりどころでは、香港映画ならではの細やかなアイデアが光っていました。
また、主人公が配属される「電子部隊」というサイバー犯罪対策の専門チームの存在も興味深いポイントでした。大規模な詐欺組織に対抗する新しい警察の在り方を象徴する存在で、もっと活躍を見てみたかった気持ちはありますが、静かにパソコンに向かっている姿にも独特の緊迫感が漂っていて、組織全体で動いている感じが伝わってきます。
そして、終盤にかけて舞台はタイへ。ここで登場するタイ警察の圧倒的な実力行使には、かなり驚かされました。詐欺グループに容赦のない強行手段を取る姿は、現実の法執行とは思えぬほどの迫力があり、まるでホラー映画を観ているような恐怖感すら覚えました。ただ、そうした衝撃的な描写の中にも、この国際的な犯罪に立ち向かうための覚悟のようなものが滲んでいて、ただ暴力的というのではなく、一種のリアリティを感じさせます。
クライマックスでは、詐欺事件が予想外の展開を見せ、一般市民をも巻き込む大規模な銃撃戦へと突入していきます。これが非常に見応えのあるアクションで、息をつかせぬ展開に釘付けになりました。香港アクションならではの構図とスピード感がしっかり活かされていて、作品のテンションが一気に最高潮に達していきます。
個人的にとても印象深かったのは、あまりアクションのイメージがないグイ・ルンメイさんが拳銃を手にして戦うシーンです。これまで清楚な印象の強い女優さんだっただけに、そのギャップに驚かされつつ、動きもキビキビとしていてかっこよく、非常に良いアクセントになっていました。彼女がそこにいるだけで画面が引き締まり、作品全体に新鮮な魅力を与えていたと思います。
この映画は、単なるアクションやサスペンスの枠を超え、現代社会が抱える国際的な犯罪の構造や、そこに挑む警察たちの葛藤、さらにはグローバルな協力の必要性までをも描いていて、見終えたあとには深い余韻が残る作品だったと思います。
☆☆☆
鑑賞日: 2019/07/25 DVD
監督 | オキサイド・パン |
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脚本 | オキサイド・パン |
出演 | ジョセフ・チャン |
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グイ・ルンメイ | |
チェニー・チェン |
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