映画【TENET テネット】感想(ネタバレ):時間逆行と世界を巡る戦い

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●こんなお話

 時間を逆再生して世界を滅ぼそうとする富豪とかとの戦いの話。

詳細ネタバレあらすじ

 キエフのオペラハウスでテロ事件が発生する。CIA工作員の名もなき男は武装部隊に紛れて建物内へ入り、仲間とともにテロリストを制圧しながら、ロシア人工作員から情報を得るための作戦を進める。作戦中、名もなき男は仲間を逃がすために行動したことで捕らえられ、拷問を受ける。情報を守るため自殺用のカプセルを飲むが、それは本物の毒ではなく、忠誠心を確認するための偽薬だった。名もなき男は任務を継続する資格を得て、通常とは異なるエントロピーを持つ物体について調査を始める。

 研究施設で名もなき男は、銃から発射された弾丸とは逆に、壁にめり込んでいた弾丸が銃へ戻っていく現象を確認する。科学者から、その弾丸はエントロピーが逆転した「逆行物体」であり、特殊な装置を使えば人間も逆行できると説明される。名もなき男は、未来から現在へ送られている物体や情報を利用した計画が進んでいることを知り、第三次世界大戦につながる計画を阻止する任務を受ける。

 名もなき男はニールと組み、インドのムンバイへ向かう。二人は武器商人サンジェイ・シンと接触し、ムンバイの高層ビルにいる情報提供者からロシア人富豪アンドレイ・セイターに関する情報を得る。セイターは逆行物体を扱っており、名もなき男はセイターの活動を調べるため、セイターの妻キャサリン・バートンに接触する。

 キャサリンは美術鑑定士で、以前、画家アレポが制作したゴヤの贋作を本物と鑑定していた。セイターはその贋作を購入しており、キャサリンが贋作だと知っていることを利用して彼女を支配していた。名もなき男はキャサリンからセイターについての情報を得て、セイターが利用する美術品保管施設へ接近する。

 名もなき男とニールは、オスロ空港にあるフリーポートへ侵入する。二人は航空機を建物に衝突させる陽動を使って施設へ入り、内部の保管区域へ向かう。そこでターンスタイルと呼ばれる装置を発見する。ターンスタイルは物体や人間のエントロピーを逆転させる装置であり、名もなき男はそこで逆行状態の人物と格闘する。その人物はマスクを着けており、名もなき男は正体を確認できない。

 名もなき男は、キエフのオペラハウスで回収された物体や、その後に各地で確認された物体が、未来の人間と関係していることを知る。それらは「アルゴリズム」と呼ばれる装置の一部だった。未来の科学者が作ったアルゴリズムには、世界全体のエントロピーを逆転させる機能がある。科学者はその危険性を認識し、アルゴリズムを九つに分解して過去の各地へ隠した。未来の人間たちは、過去に送った情報を利用してセイターに九つの部品を集めさせていた。

 セイターはソ連の閉鎖都市スタルスク12で働いていた際、未来から送られた金と情報を発見する。その後、未来から送られる指示を利用してアルゴリズムの部品を集める。未来では環境の悪化によって人類が生存しにくい状況になっており、未来の人間たちは過去の世界のエントロピーを逆転させることで状況を変えようとしていた。

 名もなき男とニールは、タリンで輸送車列を襲撃する計画を実行する。セイターも輸送車列を狙っており、アルゴリズムの部品を奪おうとする。名もなき男はケースを確保して中身を別の場所へ移すが、セイターはキャサリンを人質に取る。セイターはターンスタイルを通過して逆行状態になり、逆行弾を使ってキャサリンを撃つ。逆行弾が体内に残ったことでキャサリンは重傷を負う。

 名もなき男たちはキャサリンを救うため、ターンスタイルを使って逆行する。逆行した名もなき男は、時間をさかのぼって輸送車列が襲撃された時点へ戻る。セイター側の車両を追跡する中で、名もなき男は自分自身と同じ場所に存在することになる。セイターは名もなき男が隠したアルゴリズムの部品を奪い、名もなき男の乗った車両を横転させる。セイターは横転した車両に火をつけ、逆行状態の名もなき男を殺そうとするが、ニールが名もなき男を救出する。

 名もなき男、ニール、キャサリンはさらに時間をさかのぼり、オスロ空港のフリーポートへ戻る。ターンスタイルを通過して順行状態へ戻り、キャサリンの体内に残っていた逆行弾の影響を取り除く。名もなき男は、以前フリーポートで戦った逆行状態の人物が自分自身だったことを理解する。

 その後、セイターがアルゴリズムの九つの部品をすべて集め、スタルスク12へ運ぶ計画が判明する。セイターは自分の死と同時にアルゴリズムの位置を未来へ知らせる仕組みを用意していた。セイターが死亡すると、アルゴリズムの位置を示す情報が未来へ送られ、未来の人間がアルゴリズムを回収できる状態になる。セイターには末期の病気があり、ベトナムでキャサリンと過ごした時間を自分の最後の時間に設定する。

 TENETはセイターがアルゴリズムを使用する前に回収するため、スタルスク12で時間挟撃作戦を実行する。部隊は赤チームと青チームに分かれ、赤チームは順行状態、青チームは逆行状態で同じ時間帯の戦場を進む。青チームは逆行して戦場を確認し、その情報を利用して赤チームと連携する。

 スタルスク12では赤チームがセイターの部隊を攻撃する一方、青チームは逆行状態で同じ戦場を反対方向へ進む。セイターの部下ヴォルコフはアルゴリズムを地下施設へ運ぶ。名もなき男とアイヴスは地下施設へ入り、ヴォルコフを追跡する。

 ヴォルコフは地下施設の最深部へアルゴリズムを運び、装置を設置する。名もなき男とアイヴスは地下の部屋へ入り、アルゴリズムを回収する。しかし出口の扉が閉じられており、二人は内部に閉じ込められる。ヴォルコフは二人を殺そうとする。

 そのとき、地下に倒れていた逆行状態の兵士が起き上がり、扉を開ける。名もなき男とアイヴスは部屋から脱出し、アルゴリズムを回収する。兵士はヴォルコフに撃たれて死亡する。その兵士の装備に付いていた特徴的な紐を名もなき男が確認する。

 一方、ベトナムではキャサリンがセイターのヨットへ向かう。セイターはアルゴリズムの位置を確保した状態で死亡するため、名もなき男たちがスタルスク12で作戦を進めている時間に合わせて自分の死を実行しようとしている。キャサリンは、セイターを射殺する。セイターが死亡したことでデッドマンスイッチが作動するが、スタルスク12では名もなき男とアイヴスがアルゴリズムを回収している。

 地下施設では爆発が発生。名もなき男とアイヴスはアルゴリズムを持って地下施設から脱出する。ニールは逆行状態から順行状態へ戻り、車両を使って二人を救出する。アルゴリズムはセイター側へ渡らず、TENET側が確保する。

 作戦終了後、名もなき男、ニール、アイヴスはアルゴリズムを三つに分け、それぞれを別々に隠す。名もなき男はニールのバッグに付いている紐を確認し、スタルスク12の地下で扉を開けた兵士がニールだったことを知る。

 ニールは、名もなき男が自分をTENETの活動へ参加させたことを話す。ニールにとって名もなき男との関係は今回の作戦以前から続いており、名もなき男にとっては今回の出会いがニールとの関係の始まりになる。ニールは再び逆行し、スタルスク12へ戻る。地下施設へ入り、扉を開け、ヴォルコフに撃たれることで、すでに起きた出来事を成立させる。

 ロンドンではキャサリンが息子と生活している。プリヤはキャサリンがTENETについて知ったことから、キャサリンを殺害しようとする。名もなき男はプリヤの計画を把握し、プリヤを射殺する。キャサリンと息子はその場を離れておしまい。

●感想

 5割くらい内容がわかればいいかなと思っていましたが、実際には9割9分わからず、正直なところ、わかるかわからない以前に、単純に面白いか面白くないかという部分でつまずいてしまいました。

 最初のアクションシーンから主人公が捕まって拷問を受け、自殺しようとして、そこからタイトルが出る冒頭が一番面白かったです。ここまでは何が起こっているのか分からない状態でも、目の前で起きている出来事を追いかけることができました。

 そこから時間が逆行するルールの説明や、世界全体に関わる計画を阻止する任務が展開していきます。主人公がさまざまな人物に会うため、世界各地を移動していくので、世界を旅するスパイ映画として見ると面白いところもあります。ただ、登場人物が何を知っていて、主人公が何のためにその人物に会い、次に何をするのかが自分にはつかみにくく、序盤から主人公の行動についていけなくなってしまいました。

 そこへ、この作品の中心となる時間の逆行が加わります。通常の時間を進む人物と、時間を逆向きに進む人物が同じ場面に登場し、車が横転した状態から元に戻ったり、撃った弾丸が銃へ戻ったり、人間が後ろ向きに動いたりします。

 話の内容がつかめなくても、見たことのない映像として楽しめればよかったのですが、自分にはそこまで新鮮な映像体験として入ってきませんでした。逆再生そのものは日本のバラエティ番組などでも見慣れているためか、後ろ向きに動く人たちを見ていると、アクションやサスペンスよりもコメディのように感じてしまいました。

 その感覚のまま順行する人物と逆行する人物が戦い始めるので、「この人はいまどっち向きの時間を進んでいるのか」「この人物はさっきの人物と同じなのか」と考えてしまいます。考えているうちに次の展開へ進んでしまい、さらに分からなくなるという繰り返しでした。

 クライマックスのスタルスク12の戦闘も、誰が何の目的でどこへ向かっているのかをつかむのが難しかったです。赤チームと青チームに分かれ、順行と逆行の両方から同じ時間帯の戦場を攻略していく構成ですが、目の前で大量の兵士が戦っているため、物語上の目的よりも「この戦場では何が起きているのか」という疑問のほうが先に出てきました。

 セイターが死ぬことでアルゴリズムの位置が未来へ伝わるという設定も、理解するまでに時間がかかりました。セイターが死ねば人類に影響する計画が進むと思っていたところ、キャサリンがセイターを射殺し、その後も世界が続いていくため、「では、具体的に何が阻止されたのか」と考えてしまいました。

 ケネス・ブラナー演じるセイターが登場する場面も、サスペンスとして受け止めるより、独特な状況そのものに目がいってしまいました。特に逆行によって通常とは異なる動きをするセイターの姿は、緊迫した場面として見るよりも、どういう気持ちでこの場面を見ればいいのか分からなくなってしまいました。

 冒頭のオペラハウスの事件についても、主人公の忠誠心を確認するための試験だったと分かったところで、「これほど大掛かりな出来事を試験として行うのか」と疑問が残りました。細かい設定について考え始めると次々に疑問が出てきて、その疑問が解消される前に新しい設定が出てくるため、物語についていくことができませんでした。

 2回見れば楽しめるという前提のように感じる作りについても、映画の見方そのものを考えさせられました。1回目では理解できなかった場面が2回目に別の意味を持つ構成自体は分かります。ただ、自分の場合は同じ場面を別の視点から確認したいという気持ちより、もう一度見て理解したいという気持ちが先に生まれませんでした。

 本来なら、1回目では分からなかったことが2回目で分かることで、最初に見た場面の意味が変わり、もう一度見たくなる作品なのだと思います。ただ、自分にはそこまで到達できませんでした。複雑な設定を理解することに意識が向いてしまい、映像やアクションを楽しむ余裕もなくなっていました。

 それでも、これだけ複雑な時間の逆行を扱い、世界各地を舞台にしたスパイアクションとして巨額の製作費を集め、大作映画として完成させたクリストファー・ノーラン監督の企画力には驚かされました。通常なら説明だけで終わってしまいそうな時間の逆行という設定を、実際のアクションとして撮影し、順行する人物と逆行する人物を同じ画面で動かしてしまう発想も含めて、映画を作る側の規模の大きさを感じる作品でした。

 自分には物語を理解して楽しむことが難しい作品でしたが、「この内容を映画にして、大作として完成させる」というクリストファー・ノーラン監督の発想と、それを実現した製作陣の姿勢には強く驚かされました。

☆☆

鑑賞日:2020/09/30 シネマサンシャイン平和島 2021/06/17 NETFLIX 2026/09/03 U-NEXT

監督クリストファー・ノーラン 
脚本クリストファー・ノーラン 
出演ジョン・デビィッド・ワシントン 
ロバート・パティンソン 
エリザベス・デビッキ 
マイケル・ケイン 
ケネス・ブラナー 
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