●こんなお話
妻を麻薬売人に奪われた主人公がお手製のヒーローとなって違法行為を許さなかったり妻を奪還しようとす話。
●感想
平凡でどこか冴えない日々を送っていた男が、自分の人生で唯一幸せだった瞬間を回想する場面から物語は始まる。幼い頃の家庭環境は厳しく、学生時代には屈辱的な経験を重ねてきた彼だが、ある女性と出会い、結婚生活を送る中でようやく心穏やかな時間を手に入れた。
だがある朝、見知らぬ男が妻の行方を訪ねてきたことをきっかけに、その穏やかな日常はあっけなく崩れていく。突然の妻の失踪。主人公はあの男が関係していると確信し、警察に通報するが、真剣に取り合ってもらえない。正義を訴える声は届かず、ついには“神の啓示”を受けたと感じた主人公が、正義の名のもとに自警団として街の悪人たちに鉄槌を下し始める。
最初に標的としたのは麻薬の売人や児童に危害を加えるような人物たち。スパナを手に、夜の街に繰り出していく中で、あるコミックショップで働く風変わりな女性と知り合う。彼女は自らをヒーローの相棒として名乗り出て、一緒に行動するようになる。彼女の正義感は強く、勢いもあるが、時としてその情熱は暴走気味で、暴力の一線を越えてしまう場面も多く見受けられる。
悪人たちを次々と制裁していく2人は、ついに主人公の妻が囚われている売人の屋敷へ向かう。武装を整え、計画的に襲撃を仕掛けるが、逆に激しい反撃を受け、相棒が銃弾に倒れてしまう。主人公はひるまず、命を懸けて妻のもとへと突き進み、手下たちを倒し、ボスを討ち、ついに妻を救出する。
しかし、待ち受けていたのは再び穏やかな夫婦生活ではなく、妻は新たな人生を選び、家を離れていく。彼女は学び直し、家庭を築き、子どもを産み、自らの幸せを見つけていくことになる。
前半の物語は主人公の孤独や無力さが丁寧に描かれており、観ていて胸が締め付けられるような切なさを感じました。その分、彼が“ヒーロー”として目覚めて以降の展開は、爽快さがあるかと思いきや、むしろ暴力の激しさや報われなさが印象に残ります。アクション映画の枠にとどまらず、暴力がもたらすもの、正義の本質とは何かを問いかけるような深みを感じました。
とりわけ、エレン・ペイジさん演じる相棒の女性が登場してからの展開は予測がつかず、物語の不穏さが一気に加速します。彼女は強い憧れから主人公に近づき、相棒として行動を共にしますが、徐々にその感情は歪み、主人公を襲おうとする場面も描かれます。正義と狂気の境目を揺れ動くキャラクターとして、とても印象的でした。
終盤、妻を救出するという目的は達成されますが、その結果に待っていたのは誰もが想像するような「ハッピーエンド」ではありません。ただ敵を倒せば満足できるような勧善懲悪とは異なり、暴力の果てに残る虚しさや喪失が重く胸に残る作品でした。
☆☆☆
鑑賞日:2015/02/17 Hulu 2022/09/17 U-NEXT
監督 | ジェームズ・ガン |
---|---|
脚本 | ジェームズ・ガン |
出演 | レイン・ウィルソン |
---|---|
エレン・ペイジ | |
リヴ・タイラー | |
ケヴィン・ベーコン |