●こんなお話
移動中に地元の男性たちが追いかけまわして殺害する現場に遭遇して自らも拉致監禁されて殺された主人公が復活してリベンジしていく話。
●感想
若い女性が暴漢に襲われ、そこから不死身のような存在となって、加害者たちにひとりずつ復讐を果たしていくという物語でした。
主人公ゾーイは耳が聞こえない女性で、結婚を約束していた恋人のもとへ向かう旅の途中、ひとつの悲劇に巻き込まれてしまいます。たまたま道端で見かけたネイティブの少年が暴行されている現場を目にし、助けようとしたことから運命が大きく動き出します。彼女自身も暴漢たちに捕まり、ひどい暴行を受け、瀕死の状態で浅く掘られた土の中に埋められてしまいます。
しかし、偶然にも通りかかったネイティブの呪術師が彼女の命を救い、霊的な儀式によってゾーイは蘇生します。そのとき、彼女の身体にはかつてのアパッチ族の戦士の魂が宿り、ゾーイは霊に憑依された状態で目覚めるのです。そこからは復讐を遂げるため、身体を蝕まれながらも加害者たちを次々と追い詰め、容赦なく倒していきます。
戦いに使われる武器は、斧やナイフ、そして弓矢。弓矢で人体を真正面から貫いたり、頭部や胴体に深く突き刺したりするシーンは非常にインパクトが強く、ホラー映画でありながらシュールな笑いが生まれる場面もありました。特に、矢が首に刺さったまま男が歩き続ける描写は、ゾッとしつつも思わず笑ってしまうような、独特のバランス感覚を持った演出でした。
また、ある敵の一人が、引きずり出された腸を自分の首に巻かれて絞め殺されるという場面は、この映画ならではの見せ場のひとつとして強く印象に残ります。その描写には不気味さとユーモアが同居しており、スプラッター映画としての覚悟と遊び心を感じました。
復讐を果たしていくにつれて、ゾーイの身体は少しずつ腐敗していきます。口からは血を吐き、皮膚は裂け、まるで生ける屍のようになっていくものの、それでも彼女は立ち止まりません。物語の後半では、恋人のデインも敵に捕まり、彼を救出するために最後の激しい戦いへと突入していきます。そしてクライマックス、彼女を死に追いやった主犯を倒し、ゾーイの魂もようやく静かな安息のときを迎えます。
復讐劇としては非常に直球な構成で、物語もシンプルではありますが、殺害方法の多彩さやスプラッター演出においては非常に工夫されていました。弓矢の扱いだけでも複数のバリエーションがあり、まるで演出そのものがアクションの見せ場の一部として設計されているように感じました。単なるグロ描写にとどまらず、どこかブラックな笑いが生まれる場面も多く、そういった空気感が本作ならではの魅力になっていたように思います。
主人公ゾーイを演じたアマンダ・エイドリアンは、霊に取り憑かれたかのような表情や身体の動きに説得力があり、目を離せない存在感を放っていました。カタキ役たちは皆、あまりにわかりやすく酷い人間たちとして描かれていたため、倒されるシーンにも一定のカタルシスがありました。
ただ、物語としてはキャラクターの掘り下げが浅く、ゾーイと恋人デインとの関係性も最小限の描写にとどまっていた印象です。また、呪術やアパッチの伝統文化といったモチーフが登場するものの、深く掘り下げることなく、ストーリーの流れの中で軽く触れられる程度にとどめられていたのは少し惜しく感じました。
とはいえ、特殊メイクや肉体の崩壊表現などは非常に手が込んでおり、血や肉の質感にもしっかりとリアリティが感じられました。ジャンル映画として求められる要素が過不足なく詰め込まれており、B級テイストながらも制作側の意欲と工夫が随所に光っていたように思います。
総じて、シンプルでテンポの良い復讐ホラー映画として楽しめる一本でした。過激な表現のなかにも笑いやカタルシスが織り交ぜられており、スプラッター系やアクション好きの方には特におすすめしたい作品です。
☆☆☆
鑑賞日:2025/07/29 Amazonプライム・ビデオ
監督 | マイケル・S・オヘダ |
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脚本 | マイケル・S・オヘダ |
出演 | アマンダ・エイドリアン |
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トム・アルダバリー | |
ロニー・ジーン・ブレヴィンズ | |
アニー・チャールズ | |
ブリオン・デイビス | |
ボビー・フィールド | |
エド・フレッチャー | |
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