●こんなお話
アルカイダの捕虜になっていた軍人さんが8年ぶりに救出されるけど、彼がアルカイダに寝返ったんじゃないかとCIAのヒロインが追いかける話。
●感想
CIA職員キャリー・マティソンは、イラクでの無許可作戦の最中に得た「アメリカ人捕虜がアルカイダに寝返った」という情報を引きずりながら、双極性障害を抱えて任務を続けます。
ある日、8年間行方不明だった海兵隊軍曹ニコラス・ブロディがアルカイダのキャンプから救出され、帰国。英雄として迎えられますが、キャリーは直感的に彼が「転向したスパイ」ではないかと疑い始めます。
上司ソールとともに、キャリーは独自の監視体制を張り、違法な手段を使ってブロディの家庭を調査。妻ジェシカとの不倫、PTSDによる奇妙な行動、過去の囚われ時代の記憶と感情の揺れまで含めて、ブロディの真意を探ります。
調査を進める中で、死んだはずの別の捕虜トム・ウォーカーが生きていたことが判明し、キャリーの疑念はさらに深まる一方。やがて、ブロディがアルカイダの幹部のアブ・ナジールとつながっていた可能性が明らかになり、CIA内部でも緊張が高まります。
クライマックスでは、ブロディが副大統領暗殺を自爆テロの計画が実行に移されますが娘ダナとの対話で思いとどまるシーンが描かれ、キャリーとブロディの関係も劇的に揺れ動きます。キャリーは自身の病気や上司との確執とも格闘しながらも、国家の安全と真実を追う姿勢を崩しません。
シーズン終盤、ブロディは指導者の命令でウォーカーを殺害して信頼を裏切ってないことを証明。キャリーは自ら電気ショック療法で治療を受けるけど治療の直前にブロディがアルカイダの幹部の子どもの名前を叫んでいたことを思い出して幕を下ろす。
中東で捕虜となっていた米軍の兵士が、何年もの沈黙の後、帰還する。英雄として迎えられる彼に対し、ひとりのCIA女性分析官がある疑念を抱く――彼は、果たして本当に祖国のために戻ってきたのか、それとも、敵の手によって思想を変えられた“スリーパー”なのか。
アメリカの国家安全保障の中枢を舞台に展開するこのドラマは、サスペンスと心理劇の両面で見応えがありました。帰還兵であるブロディ軍曹は、国民から称賛される英雄でありながら、家族とは微妙な距離を感じさせる表情を見せます。一方、彼の真実を暴こうとするのが、CIAのキャリー。彼女は、双極性障害を患いながらも、その鋭い直感と執念で“何か”を感じ取り、周囲の反対を押し切って調査を進めていくのです。
最初はどこか静かに始まるこの物語。キャリーの監視カメラ映像や報告書、密かに録音された音声といった地味な作業を重ねる中で、少しずつ少しずつ、真相の輪郭が浮かび上がってきます。しかし物語が進むにつれて、彼女の精神状態が揺らぎ始め、観ているこちらまで不安にさせられるような瞬間が増えていきます。
演じるクレア・デインズさんの芝居がとにかく圧巻でした。序盤では冷静で知的な分析官として画面に立っていたキャリーが、回を重ねるごとに感情を揺らし、時に涙を見せ、時に怒りを爆発させるようになる。その変化がとても自然で、でもどこか危うく、画面から目が離せなくなりました。怒鳴り散らすわけではなく、眉の動き、声の震え、目線のブレといった細かな仕草で精神の不安定さを伝えていて、非常に説得力がありました。
一方で、静かに張り詰めた空気が続くので、劇的なアクションや派手な展開を求めると肩透かしを食らうかもしれません。
終盤には、予想もしない事実が次々と明らかになっていき、ここまで張りつめてきた伏線が一気に繋がっていくような快感もありました。ただし、シーズン1は物語全体のほんの序章で、核心はまだまだ明かされないまま終わってしまいます。この構成には少し戸惑いも感じましたが、同時に続きを観ずにはいられない引力がありました。
まだ真実が明らかになったとは言えない状況で、物語はさらに深い迷路に突入していく予感を残します。キャリーの執念がどこへ向かうのか、ブロディは本当に何者なのか、誰が味方で誰が敵なのか。そのすべてが宙ぶらりんのまま、物語の続きが気になって仕方ないドラマでした
シーズン1は「英雄」ブロディの帰還をきっかけに、キャリーの狂おしいほどの疑念と探求心がドラマを引っ張る構造になっています。終始緊張感が途切れず、観る者に「誰を信じるべきか」を突き付け続ける佳作でした。
☆☆☆☆
鑑賞日: 2015/04/01 DVD 2025/08/01 Amazonプライム・ビデオ
製作総指揮 | ハワード・ゴードン |
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アレックス・ガンサ |
出演 | クレア・デインズ |
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ダミアン・ルイス | |
マンディ・パティンキン | |
モリーナ・バッカリン |