●こんなお話
大物犯罪者の証拠らしいスマホを持って追われる詐欺師と彼を護送するジャッキーがロシアから中国までいろんな名所を巡りながら追っ手と戦う話。
●感想
冒頭から強い引力を持った展開で始まるこの作品。ジャッキー・チェン演じる主人公の相棒として登場するのが、エリック・ツァン。爆弾を身体に巻かれた状態で登場し、タイムリミットが刻一刻と迫る中、ジャッキーが必死に救出を試みるものの、時間は残酷で、間に合わず。最期の瞬間、相棒は腕時計を外してジャッキーに託し、「娘を頼む」とだけ言い残して海へ飛び込む。爆発音とともに、物語は一気にその後の9年後へと時間が進みます。
時が経ち、ジャッキーは今や香港の凶悪な犯罪王を追う刑事に。長年追っている黒幕の正体に近づいたかに見えるものの、捜査の過程で次々と一般家庭を巻き込み破壊してしまうなど、やや過激な捜査が仇となり停職処分を受けてしまいます。しかも、彼が追っていた男はメディアにも顔を出すような有名人で、犯罪王どころか社会的に成功した人物だと判明。ジャッキーの信念は揺らぎながらも、事件の核心へと歩みを進めていきます。
一方その頃、ロシアでは別の騒動が。アメリカ人の詐欺師がロシアンマフィアに命を狙われており、こともあろうにマフィアのボスの娘を妊娠させたということで、「ファミリーになれ」と無理やり脅される始末。そんな窮地に現れるのがジャッキー。偶然にもこの詐欺師が犯罪王に関わっていたことが判明し、彼をマカオまで護送することになります。
ここから物語は一気にバディムービー、そしてロードムービーとしての色合いを強めていきます。詐欺師との凸凹コンビで、ロシアから中国、モンゴル、さらにはゴビ砂漠へと舞台はめまぐるしく変化し、追いかける者と追われる者の関係が次々に入れ替わる展開に。移動のたびに現地の人々と触れ合いながら、祭りや文化、自然風景が映し出されるあたりは、もはや世界紀行番組を見ているような感覚にもなり、作品のもう一つの魅力として映ります。中国の田舎町の雄大な風景や伝統行事の描写など、観光映画的な要素がふんだんに盛り込まれているのも印象的でした。
物語のカギを握るのは一台のスマートフォン。指紋認証でロックがかかっており、中に重大な証拠があるらしいのですが、解除するには持ち主である犯罪者の指が必要。だからという理由だけで、あまりに確信のないままボスの元へと向かおうとするジャッキーたちの大胆さには、思わず感心させられてしまいます。ストーリーの根幹がけっこうな“ノリと勢い”で進んでいくのが本作の持ち味とも言えます。
詐欺師は当初、証人として証言することを拒み、何度も逃げ出そうとしますが、そのたびにすぐ見つかって連れ戻されるという展開が繰り返されます。逃亡劇としての緊張感はそこまでなく、テンポの良いドタバタ喜劇のような仕上がりになっていました。証言に対する彼の心の変化も明確には描かれず、なんとなく流れで「証言するよ」と口にするような感じで、それがまた本作のライトなトーンと合っていたようにも思います。
重要なスマホが中国の国境で没収された際も、いつの間にか手元に戻ってきており、そのあたりの展開の軽さも本作らしい特徴でした。ストーリー上の整合性よりもテンポ感や賑やかさを優先したつくりで、肩ひじ張らずに楽しめる構成になっていると感じました。
とはいえ、ジャッキーらしいアクションは随所に散りばめられており、敵との追走劇やバトルシーンではおなじみのカンフーアクションも健在。そこにコメディ要素が絶妙に混ざり合っていて、気軽に楽しめるエンタメ作品として成立していたと思います。美しい風景と美人女優たち、そしてジャッキーらしい奮闘が詰まった、にぎやかな一本でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2018/01/08 Blu-ray 2022/02/28 NETFLIX
監督 | レニー・ハーリン |
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脚本 | ジェイ・ロンジーノ |
ベンデヴィッド・グラヴィンスキー | |
製作 | ジャッキー・チェン |
出演 | ジャッキー・チェン |
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ジョニー・ノックスヴィル | |
ファン・ビンビン | |
エリック・ツァン | |
シ・シー | |
ウィンストン・チャオ | |
ヨン・ジョンフン | |
イヴ・トーレス | |
リチャード・ン |
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