●こんなお話
子どもを殺そうとする家光の刺客たちと子どもを守る浪人たちの話。
●感想
湯治に訪れていた徳川三代将軍・家光の長男、竹千代。山深い温泉地で過ごす穏やかな時間は、突如現れた根来忍者の急襲によって一変する。護衛にあたっていた侍たちは、斬り伏せられ、周囲は一瞬にして地獄と化す。少年の命が絶体絶命となったその時、疾風のように現れる浪人たちの姿。先頭に立つ緒形拳演じる浪人の構えは、ただそこに立つだけで空気を変える力を持ち、竹千代を守るために刀を抜く。ここから物語は、一気に豪快な時代活劇の世界へと突入していく。
物語の中心には、家光による恐るべき陰謀が据えられている。実の息子である竹千代を抹殺するため、家光は一万の幕府軍を動員するという驚くべき展開。これに立ち向かうのは、わずか七人の浪人たち。圧倒的な物量の差の中、彼らは命を懸けて竹千代を守る。戦の準備もままならないまま逃亡を続ける竹千代一行。理屈よりも勢いで突き進む展開に、理屈を超えた熱量が宿っていました。観る者を巻き込むその力こそ、この映画の魅力の核といえると思いました。
アクション面では、ジャパンアクションクラブによる圧巻の演出が光って。崖から転がり落ちるスタントや馬上での乱戦など、どのシーンも見応えがあり、ひとつの場面が終わるたびに息を整えたくなるほどの密度でした。浪人たちもそれぞれの武器と個性を持ち、爆弾使い、中国拳法の達人、ムチ使い、そして貫禄ある副将格といった面々が揃う。彼らが「先に行け!」と命を繋ぐように散っていく姿には、古き良き時代劇の浪花節的な情感が漂ってました。
ただ、浪人たち一人ひとりの背景や動機が深く描かれないまま命を懸けていくため、その死の重みがやや薄く感じる場面も。だがそれを補って余りあるのが、作品全体を包むエネルギー。火炎に包まれながら突進する姿にどこか人形のように見える馬の奔走に至るまで、すべてが熱を持って画面に焼きついていて、理屈抜きで楽しませる娯楽性がここにはありました。
クライマックスでは、緒形拳と千葉真一による一騎打ちが展開されて。刀と拳が交わる異種格闘技戦のような緊迫感。筋肉の動き一つ一つがリアルで、そこには単なる殺陣を超えた「生身の戦い」が宿っていると思いました。アクションの構成も計算されていて、最後まで緊張の糸を切らさなかったです。特に長門裕之が炎を背負いながら突進する場面は圧巻で、燃え盛る炎の中に宿る義の心が強く胸に残りました。
その熱狂の戦いが終わると、舞台は江戸城へ移る。静まり返った空間での芝居が続き、熱を帯びた戦場から一転して静謐な時間が流れてました。
ラストを彩るのは、アルフィーによる主題歌。命を懸けて守るべきものがあり、そのために刃を交える浪人たちの姿には、時代劇が持つ普遍的な美しさが息づいていいて、荒唐無稽であっても真っ直ぐに突き進むその精神に、観る者の胸を打つ力があって、壮大で、熱く、そしてどこか哀しい。まさに「これぞチャンバラ娯楽映画」と言いたくなる一本でした。
☆☆☆☆☆
鑑賞日:2013/08/23 DVD 2025/10/22 U-NEXT
| 監督 | 降旗康男 |
|---|---|
| 脚本 | 中島貞夫 |
| 松田寛夫 | |
| 原作 | 中島貞夫 |
| 松田寛夫 |
| 出演 | 緒形拳 |
|---|---|
| 加納みゆき | |
| 二宮さよ子 | |
| 真矢武 | |
| 織田裕二 | |
| 浅利俊博 | |
| 荒井紀人 | |
| 成瀬正孝 | |
| 丹波哲郎 | |
| 長門裕之 | |
| 茂山逸平 | |
| 胡堅強 | |
| 京本政樹 | |
| 松方弘樹 | |
| 千葉真一 |


