●こんなお話
ハリウッドの大物プロデューサーの生家買いを告発しようとする女性たちと彼女たちを取材する記者たちの話。
●感想
大統領候補であるトランプに関する記事を執筆している主人公。記事の告発者はメディアに追われ、脅迫を受けるという衝撃的な幕開けとなる。
その後、ニューヨーク・タイムズの記者の一人が、ハリウッドで長年にわたり囁かれてきたセクハラ問題を記事にしようと動き出す。取材の矛先は、業界でも絶大な影響力を持つ大物プロデューサー。彼が行ってきた性加害の証拠を掴むため、関係者たちに次々と接触していく。サバイバーからは「オンレコでは話せない」と断られることも多く、取材の合間に家族と過ごす時間を失っていく日々のストレスも描かれる。
加害者側の部下や弁護士からは、「あの人物に会え」や「スマホを確認してみろ」といった断片的なヒントがもたらされ、それらを積み重ねて真実へと近づいていく。やがて、加害者本人が新聞社へ押しかけ、直接の対話に発展。最終的に、サバイバーの名前を明記した記事を入念に確認し、ついに公開へと至る。
この作品は、加害行為そのものと、それを阻止できず、訴えも困難にする法律や社会構造の問題を真正面から描きます。声を上げることによって初めて社会が変わり始める様子を、真摯なトーンで見せてくれていると感じました。
映像の多くはバーやカフェ、会議室などでの会話劇で構成され、入室や退室までの動作を丁寧に映すため、130分という尺がやや長く感じられる部分もあります。また、ワインスタインという人物がなぜそこまで権力を持ち、業界で“王”のような存在となったのか、その背景や功績がほとんど描かれないため、初めて彼の名前を聞く人には影響力の大きさが掴みにくかったです。
加えて、初見では登場人物の顔と名前を一致させるのが難しく、特に男性キャラクターは似た印象の人物が多いため、会計係や顧問弁護士といった立場の違いが分かりにくい場面もありました。とはいえ、トランプの声がそっくりな再現で思わず笑ってしまうシーンもあり、重い題材の中にも思わぬ軽さが差し込まれた1本でした。
☆☆☆
鑑賞日:2023/01/17 T・ジョイPRINCE品川
監督 | マリア・シュラーダー |
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脚本 | レベッカ・レンキェヴィチ |
原作 | ジョディ・カンター |
ミーガン・トゥーイー | |
レベッカ・コルベット |
出演 | キャリー・マリガン |
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ゾーイ・カザン | |
パトリシア・クラークソン | |
アンドレ・ブラウアー | |
ジェニファー・イーリー | |
サマンサ・モートン |