●こんなお話
浪人が仲間たちのために戦う話。
●感想
幕末の世を揺るがした鳥羽伏見の戦い。その混乱の只中で、「人斬り抜刀斎」として知られる剣士が剣を振るう姿から物語は始まる。刃を向けられた敵兵たちを次々と斬り伏せ、ただ一人、戦場を駆け抜けていく主人公の姿に、ただならぬ空気が漂っていた。
時代は明治へと移り変わり、戦いの傷跡も薄れつつある頃。かつて「人斬り」と恐れられた剣士は、その名を捨て、流浪人として静かに世を渡るようになっていた。ある日、町を歩く彼の前で再び「抜刀斎騒ぎ」が巻き起こる。道場の主が犯人を探しているうち、主人公が声をかけられるも、それはただの誤解だった。
その一方で、裏の世界では大きな陰謀が動き出していた。武器商人が闇医者と手を組み、新型の麻薬を開発。危険な薬の影響で犠牲者が出始め、やがて医者は開発を後悔し逃亡することになる。警察に保護を求めていた医者のもとに、商人に雇われた刺客たちが現れ、警察署を容赦なく襲撃。警官たちが一人また一人と命を落とす中、医者は辛くも逃れ、道場へと転がり込む。
その道場では、ヒロインである師範代が主人公と心を通わせ始めていた。殺さずの誓いを胸に秘め、人を斬る剣ではなく、人を守る剣を志す道場で、彼はようやく自分の剣の意味を見つけかけていた。そんな穏やかな時間をかき乱すように、武器商人が姿を現し、主人公に手を組もうと持ちかけるも、主人公はそれを拒否。するとすぐに、喧嘩屋が現れて主人公に勝負を挑む。どうやら、彼は自身の腕を見せつけて金持ちに売り込みたかった様子だが、何故か途中で戦いをやめてしまう。
その後、道場にいた医者のもとに刺客が現れ、井戸に毒を仕込む騒動が起きる。住民たちが苦しむ中、医者は、解毒に成功。一命を取り留めた人々の前で、贖罪の道を歩み始める。一方、喧嘩屋も何故か自然と道場に居つき、いつの間にか主人公と肩を並べる立場となっていく。
終盤、医者が再び武器商人のもとへ戻ったことをきっかけに、主人公と喧嘩屋は屋敷へと突入。多数の傭兵たちをなぎ倒し、刺客たちと壮絶な戦いを繰り広げることになる。中でも、道場の師範代が刺客に人質として囚われたシーンでは、主人公がかつての「人斬り」に戻りかけるものの、彼女の言葉により思いとどまり、剣に託した信念を取り戻す姿が印象的だった。戦いの果てに事件は収束し、再び日常が戻ってくる。
物語序盤から「神速の剣」とも呼ばれる主人公のアクションが次々と展開され、目を奪われる映像の連続でした。一対多数の戦いをテンポよく見せていく構成はとても迫力があり、観ていて引き込まれる場面が多かったです。内戦の時代から明治へ、価値観が大きく変わる中で、剣の在り方を問う主人公の姿には共感を覚えました。過去と向き合い、贖罪と信念のはざまで揺れ動くその姿が丁寧に描かれていたと思います。
ただ、登場人物たちの動きにはやや疑問も残りました。例えば、逃げてきた医者がすぐに牛鍋を囲んでいたり、喧嘩屋が途中で戦いを放棄して気づけば味方のようになっていたりと、キャラクターの行動に首を傾げたくなる場面もありました。とはいえ、こうした軽い描写が物語全体に余白を与えていたとも感じます。
終盤の50分は、アクションシーンがこれでもかと続き、佐藤直紀さんの音楽と谷垣健治さんのアクション演出が高い熱量で融合しており、観ていて非常に高揚感がありました。多少長く感じるところはありましたが、剣戟アクションの魅力が詰まっており、クライマックスに向かって気持ちがどんどん盛り上がっていく作りになっていたと思います。
メッセージとしては、「人を殺さずに生きていくことができるのか」という問いが繰り返されていたのですが、終盤にかけて少しその問いかけが多くなりすぎて、やや食傷気味にも感じる部分がありました。ただ、それでも最後まで貫かれた信念の強さには、胸に残るものがあったのも確かです。
☆☆☆
鑑賞日:2012/12/30 Blu-ray 2025/07/23 Amazonプライム・ビデオ
監督 | 大友啓史 |
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アクション監督 | 谷垣健治 |
脚本 | 藤井清美 |
大友啓史 | |
原作 | 和月伸宏 |
出演 | 佐藤健 |
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武井咲 | |
吉川晃司 | |
蒼井優 | |
青木崇高 | |
綾野剛 | |
須藤元気 | |
田中偉登 | |
奥田瑛二 | |
江口洋介 | |
香川照之 |