映画【木の上の軍隊】感想(ネタバレ):沖縄を舞台にした静かな戦争ドラマ

kinouenoguntai
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●こんなお話

 1945年、沖縄・伊江島で終戦後も木の上で過ごした軍人2人の話。

●感想

 1945年、沖縄・伊江島で飛行場を作る新兵と作戦指導する少尉がいて、地元民を竹やり訓練して気合が足りないと指導する少尉や新兵は砂浜で過ごしていたら米軍の空襲が始まって被害が出て、米軍が上陸し、日本軍は壊滅的な打撃を受けます。ベテランの少尉・山下と、地元出身の純朴な新兵・安慶名セイジュンは、敵の銃撃を逃れてガジュマルの木の上に身を隠す。

 食料も通信手段も途絶えたなか、2人は約2年間、木の上で極限の時間を過ごします。戦友の死体があったり、敵軍の陣地は徐々に木のすぐ下まで迫ってきます。食料を調達して調理したり動物性たんぱく質をとるのが大変だったり。

 木の上での孤独な日々の中、山下は戦争の意味、国家への忠義と向き合うす。一方、新兵の安慶名は故郷への思いと生への執着を抱えながら過ごして2人の考えの違いが出て2人とも涙する。

 終戦を知らせる手紙が島民を通して2人に届いて新兵は帰りたい。少尉は米軍基地に突っ込もうとするけど、地元民から終戦を聞かされて、マムシに噛まれそうになったりしつつ帰ろうと決断して海水浴していくという。

 役者さんの熱演は凄いと思いました。堤真一さんと山田裕貴さんが演じる2人は、極限状態での緊張と恐怖を全身で表現していて、画面に引き込まれました。

 ただ、役者さんがずっと感情を爆発させていて、見ているこちらが疲れる瞬間もありました。2人ともずっと張り詰めた演技なので、観終わったあとに気力が減ってしまうような感じです。

 また、史実をベースにしてはいるものの、史実や細部の描写よりも象徴性を優先する演出が印象に残ります。たとえば、山下と安慶名の関係に、沖縄と本土の歴史的関係が重ね合わされるような描かれ方もあり、単なる戦争映画というよりも、文化や視点の違いをも内包する人間ドラマとして受け取ることができます。史実を知りたいと思う方にはやや物足りなさもあるかもしれませんが、それ以上に「語られなかった想い」を映像で掬い上げようとする意図が感じられました。個人的には実際の人物がその後どうなったのか知りたかったです。

 そして何より、全編沖縄ロケで撮影された景色の美しさは特筆すべきものでした。どこまでも広がる青い空、風に揺れるガジュマルの葉、その下に漂う静かな空気。それらが、戦争の現実を、派手な爆発や銃撃ではなく、沈黙の重さとともに伝えてくれていたように思います。映画という形式でしか表現できない、濃密な時間がそこにあるとは思いました。

☆☆

鑑賞日:2025/08/03 イオンシネマ座間

監督平一紘 
アクション監督翁長大輔 
脚本平一紘 
原作こまつ座:(「木の上の軍隊」)
原案井上ひさし 
出演堤真一 
山田裕貴 
津波竜斗 
玉代勢圭司 
尚玄 
岸本尚泰 
城間やよい 
川田広樹(ガレッジセール)
玉城凜 
西平寿久 
花城清長 
吉田大駕 
大湾文子 
小橋川建 
蓬莱つくし 
新垣李珠 
真栄城美鈴 
山西惇 
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