●こんなお話
ダメダメだった明軍が将軍の統率によりパワーアップして、倭寇に反撃する話。
●感想
16世紀、中国の東南沿岸。浙江省の海辺の村々に、日本から渡ってきた海賊たちが押し寄せ、家々を焼き払い、略奪を繰り返していた。
明の朝廷はこの脅威に頭を抱え、老将・余大斗が討伐に当たっていたものの、倭寇の勢いは凄まじく、数でも武器でも太刀打ちできない。政府は打開策として、若き軍略家・戚継光を召し出す。彼は新たな兵法と訓練法を備えた異端の指揮官だった。
戚継光は、鍛錬の行き届かない兵を一から鍛え直す。竹竿を使った新兵器や、火縄銃を駆使した戦術を導入し、数で劣る兵たちに創意と工夫を教え込む。
最初の戦で倭寇を撃退するも、老将・余大斗は宮廷内の権力争いに巻き込まれ失脚する。戚継光は謹慎中の余大斗を訪ね、学びを得ながら再び戦への意志を固める。敵の使う日本刀の研究し、合理と情熱を併せ持つ指揮官として成熟していく。
一方、倭寇を率いるのは侍の熊澤という男。彼はただの略奪者ではなく、戦いに誇りを持つ武士として生きる道を選んでいた。若き跡取りに戦を教え、浪人たちを使い捨てにしながらも、戦場に己の美学を貫こうとしていた。
やがて両軍は再び対峙する。戚継光の陣では、留守を守る妻たちも武装し、城を死守する覚悟を見せる。家族を案じながらも作戦を止めず、兵たちを導く戚継光。
激しい攻防の末、熊澤は敗北を悟り、若い跡取りを逃がす。最後の誇りとして、彼は戚継光と一騎打ちに臨む。火と煙が立ち込める戦場で、二人の剣が交わる。静寂の中で熊澤は潔く腹を切り、戦は終息へと向かう。
家では、戚継光の妻が夫の帰りを待ち続けておしまい。
倭寇を単なる海の略奪者ではなく、日本の浪人や反乱を起こした中国人たちが入り混じった“国境を越えた犯罪集団”として描いている点が興味深く感じました。時代の混沌を背景に、さまざまな思惑が交錯する群像劇としての深みがありました。
明軍の訓練シーンでは、上半身裸の兵たちが海辺で整列して走る場面があり、その映像的な迫力と奇妙なユーモアが印象に残りました。どこかアメリカ軍映画のようなテンションが漂い、時代劇としての堅さを少し和らげていました。
ただ、戦略や戦術の駆け引きがもう少し細やかに描かれていれば、より厚みのある戦記ドラマになったように思います。戦のシーンは勢い重視で展開し、なぜ勝敗が分かれたのかという描写がややあいまいに感じました。兵士たちが鍛え上げられて強くなっていく過程も早足で進み、主人公以外の人物の個性が見えづらかったのは惜しい部分です。
一方で、戚継光の家庭での姿は印象的でした。妻に頭が上がらない恐妻家ぶりや、家族を守るために奮闘する妻たちの描写には温かみがありました。戦乱の時代にあっても、家族の絆や信頼が物語を支えていたように感じます。
サモ・ハン・キンポー演じる将軍の登場は短いながらも強い存在感を放っていました。彼の敗戦と退場は唐突でしたが、歴史の流れの速さを象徴しているようでもありました。
クライマックスの倉田保昭さんとの一騎打ちは、まさにこの映画の見せ場。剣と剣がぶつかる音が響く中、武士と武将という異なる生き方が一瞬で交わる。その場面には、戦の残酷さと人の誇りの美しさが同時に刻まれていました。
☆☆☆
鑑賞日: 2018/06/20 DVD 2025/11/14 DVD
| 監督 | ゴードン・チャン |
|---|---|
| 脚本 | マリア・ウォン |
| フランキー・タム | |
| ウー・マンチャン | |
| 撮影 | 石坂拓郎 |
| 音楽 | 梅林茂 |
| 出演 | チウ・マンチェク |
|---|---|
| サモ・ハン・キンポー | |
| ワン・チェン | |
| 倉田保昭 | |
| 小出恵介 |



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