●こんなお話
近未来のアメリカで、ロボットの警官を国内に配備するか否かの法案を巡って。何とかロボットを配備させようと感情のあるロボットと人間の警官を作っちゃって、ロボット警官本人や家族の事は二の次に、何とかお金儲けをしようとする悪い金持ちたちの話。
●感想
リメイク版『ロボコップ』は、ポール・バーホーヴェン監督によるオリジナル版とはまったく異なるアプローチで描かれていて、観る前の予想をいい意味で裏切られる内容になっていました。オリジナルが、手足が吹き飛ぶような過激なバイオレンス描写と皮肉の効いた近未来SFだったのに対し、リメイクはどこか懐かしい1970年代のアメリカンSFアクションの香りが漂っています。
物語は、ロボットによる治安維持の是非を巡って国内世論が大きく二分している世界から始まります。そんななか、デトロイトの街で日々の事件に立ち向かう刑事マーフィーが主人公。彼は腐敗した警察組織の中で真っ直ぐに悪と向き合い続けていましたが、ある事件で重傷を負ってしまいます。
彼の身体は、オムニ社の技術によってロボコップとして再生されることになります。改造された身体に戸惑い、感情は保ちながらも自らの姿に絶望し、それでも家族のために新たな運命を受け入れていく過程が、非常に丁寧に描かれていて胸を打たれました。特に、息子とアメフトについて語る場面では、父としての記憶がよみがえるようで、感情の揺れがストレートに伝わってきて、思わず涙腺が刺激されました。子どもの純粋さには抗えないものがありますね。
ロボコップの導入が進むにつれ、街の犯罪率は目に見えて下がっていき、世論は次第にロボットによる警備の有効性を支持する方向へと傾いていきます。しかし、技術には必ず綻びがあり、全てがうまくいくわけではありません。ロボコップの活動にも予期せぬトラブルが発生し、その都度、周囲の人間たちは状況をごまかしながら対応していく様子が描かれます。
この作品では、ロボコップ本人よりも、彼を取り巻く人々の葛藤や利害関係に焦点が当たっていたのが印象的でした。とくに、研究者を演じたゲイリー・オールドマンの繊細な演技や、オムニ社のCEOを演じたマイケル・キートンの存在感が際立っており、彼らの動向がストーリーの中心にあるようにも感じられました。法案さえ通してしまえばあとは何をしても構わないという構図は、どこか現代の社会を皮肉るようでもあり、フィクションでありながらも不思議と現実味を帯びて感じられます。
主人公であるマーフィーも、最初は感情豊かな人間として再出発しますが、徐々にシステムの影響によって感情が薄れ、機械としての側面が前面に出てきます。その変化に耐えられなくなった家族の悲しみが描かれる場面は非常に切実で、家族というテーマの重みを改めて感じさせてくれました。そんななかでも、再び立ち上がり、自らの意思で悪と向き合う姿に力強さを覚えます。
物語の終盤では、かつての同僚や巨大ロボットED-209との対決も用意されていて、アクション演出の熱量も存分に楽しめました。カット割りや音響設計の巧さも相まって、手に汗握る展開が続き、クライマックスはしっかりと観客を引き込む迫力がありました。
ただ、オリジナル版に登場していたような、強烈な個性を持った悪役がいなかった点については少し惜しく感じました。とはいえ、全体としては非常に見応えのあるSFアクション作品であり、親子で鑑賞しても楽しめる作風になっていたと思います。むしろ、バーホーヴェン版よりも、特撮ヒーローのような要素が強くなっていて、かつて東映が送り出していたメタルヒーローシリーズのような雰囲気に近いテイストだったのが、懐かしくもあり新鮮でもありました。
☆☆☆
鑑賞日: 2014/03/14 イオンシネマ多摩センター 2018/06/19 Amazonプライム・ビデオ
監督 | ジョゼ・パジーリャ |
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脚本 | ジョシュア・ゼトゥマー |
ニック・シェンク | |
オリジナル脚本 | エドワード・ニューマイヤー |
マイケル・マイナー |
出演 | ジョエル・キナマン |
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ゲイリー・オールドマン | |
マイケル・キートン | |
アビー・コーニッシュ | |
ジャッキー・アール・ヘイリー | |
マイケル・K・ウィリアムズ | |
ジェニファー・イーリー | |
ジェイ・バルシェル | |
サミュエル・L・ジャクソン |