●こんなお話
のび太くんが捨て犬を拾ってきてる中、ジャイアンの恐怖政治で秘境を冒険する話。
●感想
ドラえもん一行が訪れたのは、アフリカの広大な大地。秘境を舞台に繰り広げられる今回の冒険は、ビーストと呼ばれる動物たちとの出会いをきっかけに始まる。自然に囲まれた地で、ドラえもんが秘密道具を使ってピンチを切り抜ける展開が続いていくが、そんな中、ジャイアンがある主張をする。「せっかくの冒険なんだから、秘密道具に頼るのはやめよう」と。こうして突如始まった“秘密道具禁止ルール”により、状況は一転。苦戦を強いられる一同は、やがてビーストたちの猛威にさらされることになる。
やがてジャイアンが「自分のせいでピンチになった」と責任を感じ、すっかり落ち込んでしまう場面が挟まれる。このあたりは、仲間との絆や信頼のズレを丁寧に描いており、シリーズらしさが滲む展開となっている。そして、拾った犬のペコに隠された秘密が明らかになっていく。ここから物語は大きく動き始める。
ペコの正体が明かされるまでの流れは少し長く感じられるかもしれません。アフリカの大地を舞台にした冒険は確かに見どころも多く、目を引く映像が続くのですが、ストーリーとしてはあまり進んでいない印象もありました。もう少しテンポ良く切り替えてもよかったように思います。
中盤以降、ペコが実は王子だったという設定が明らかになり、クーデターで国を追われた彼と共に王国を取り戻す戦いへと突入していきます。このあたりからは、仲間たちの役割が明確になってくるので、物語もより熱を帯びてきました。
特に印象的だったのは、仲間が絶体絶命の状況に陥る中で、ジャイアンが「俺は行く。みんなは逃げろ」と言って自ら前線へと進んでいく場面です。ペコとともに敵のもとへと歩を進めるジャイアンの後ろ姿がカメラに映し出される演出には、胸が熱くなりました。これまでちょっと浮いていた存在だった彼が、ようやく物語の中で自分の役目を掴む瞬間だったと思います。
犬のキャラクターたちも個性が際立っていて、敵味方問わず魅力がありました。ビジュアルの愛らしさだけでなく、行動にも説得力があり、ペコを中心に動いていく物語をしっかりと支えていた印象です。結果として、本作は冒険と友情、信頼をテーマに据えた楽しいエンターテインメントになっていたと思います。
家族で楽しめる内容でありながら、キャラクターの成長や感情の揺らぎも感じさせる作りで、大人も見ごたえがある作品でした。テンポ感にやや課題を感じる場面もありましたが、全体としてはワクワクとした高揚感を味わえる冒険映画に仕上がっていたと感じます。
☆☆☆
鑑賞日: 2014/03/09 TOHOシネマズ南大沢
監督 | 八鍬新之介 |
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演出 | 岡野慎吾 |
脚本 | 清水東 |
原作 | 藤子・F・不二雄 |
出演(声) | 水田わさび |
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大原めぐみ | |
かかずゆみ | |
木村昴 | |
関智一 | |
小林ゆう | |
夏目三久 | |
小栗旬 |