●こんなお話
ゴジラに破壊されたメカゴジラをまた再生させて、再び地球制服を狙う宇宙人との戦いの話。
●感想
ゴジラ映画シリーズの中でも、今作は少し異色のバランスで描かれていたように思います。これまでの作品では、ゴジラと味方怪獣が協力して、敵側の怪獣1体を相手にする構図が多く、ゴジラ側が圧倒的優位な展開になりがちでしたが、今回はメカゴジラに加えてチタノザウルスという2体の怪獣が立ちはだかり、ゴジラが苦戦を強いられるという展開が新鮮でした。圧倒されるゴジラの姿は迫力があり、戦いの行方が読めなくなることで、怪獣映画としての見応えが増していたと思います。
物語の中心には、サイボーグとして生きるヒロインと人間の青年との悲恋が据えられており、怪獣映画でありながら人間ドラマに重きを置いた構成となっています。ヒロインがメカゴジラの操縦装置になっているという設定が非常に興味深く、メカゴジラを止めるためには、彼女を犠牲にせざるを得ないという葛藤が物語の重心として描かれていきます。
ヒロインの父親である博士は、かつては優れた科学者でありながらも世間から孤立し、その心の隙間に付け入るかたちで宇宙人の計画に協力してしまいます。娘をサイボーグに改造したという重い過去を抱えながらも、何とか人間らしい感情を取り戻そうとする姿は印象深く、観ていて胸が締めつけられるような思いになりました。終盤、戦いの中で流れ弾に当たって命を落とすという退場の仕方は、偶然の産物のようでもありましたが、彼の人生の孤独と苦悩が凝縮されたような瞬間だったとも感じました。
メカゴジラについては、前作での激戦を経て敗れたはずの機体が、再び同じ形で蘇るという展開になっており、そこはやや不思議に思う部分でもありました。一度失敗した兵器をなぜもう一度使用するのか、その背景の描写がもう少しあるとより説得力が増したのではと感じます。また、メカゴジラを遠隔操作する司令部があり、そこが機体と連動して爆発するという仕組みもユニークではありますが、かなり思い切った設計だと感じさせられました。SF的な面白さはありますが、少し夢のある荒唐無稽さとして楽しむ余地がありました。
そしてもう1体の怪獣であるチタノザウルスは、純粋な怪獣というよりも、過去から甦った恐竜という設定で、科学者の博士の研究対象であった存在。そのためか、戦いに巻き込まれていく様子にはどこか悲哀がありました。特に電磁波によって苦しめられる場面では、観ていて思わず感情移入してしまい、単なる敵怪獣とは違った存在感があったように思います。
戦いの比重がゴジラよりもメカゴジラやチタノザウルスに向いているため、ゴジラそのものの存在感はシリーズの中ではやや控えめに感じられる部分もありましたが、物語全体としては人間と機械、愛と犠牲というテーマを怪獣映画に持ち込むことで、少し異なるテイストに仕上がっていたと受け取れました。戦闘描写の迫力に加えて、静かに進行する人間ドラマの比重が高い作品として、印象に残る1本だったと思います。
☆☆
鑑賞日: 2016/08/02 Hulu
監督 | 本多猪四郎 |
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特技監督 | 中野昭慶 |
脚本 | 高山由紀子 |
出演 | 平田昭彦 |
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藍とも子 | |
内田勝正 | |
佐々木勝彦 | |
麻里とも恵 | |
睦五郎 | |
伊吹徹 | |
六本木真 | |
中丸忠雄 | |
冨田浩太郎 | |
大門正明 | |
鈴木和夫 | |
桐島好夫 | |
沢村いき雄 | |
佐原健二 |
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