映画【ミュンヘン】感想(ネタバレ):国家と家族に揺れる任務の緊迫

munich
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●こんなお話

 パレスチナのゲリラがミュンヘンオリンピックでイスラエルの選手を殺害して、報復でイスラエルの工作員が首謀者を暗殺していく話。

●感想

 冒頭、オリンピック会場でのテロが描かれ、物語は一気に緊迫した状況から始まる。主人公はドイツ系イスラエル人の男性で、イスラエル政府の命令に従い、報復作戦を遂行するためチームを組むことになる。彼の任務は、国家のために標的を暗殺することだが、彼のチームは熟練の暗殺者ではなく、むしろ不器用で経験不足のメンバーばかり。計画通りに進まないドタバタぶりが、観る者にハラハラとした緊張感を与え、単調になりがちな暗殺劇に絶妙なスパイスを加えていました。

 一つひとつの暗殺作戦は淡々と描かれる。標的の居場所を知り、決行する。その後、次の任務が与えられ、また決行する。3時間近い上映時間ながら、繰り返される行動の中で緊張感が持続し、飽きることなく物語に引き込まれるものでした。任務を遂行するたび、計画外の危険が訪れる。幼い娘を巻き込んでしまいそうになったり、爆薬の量を間違えて一般市民を巻き込んでしまう瞬間も。暗殺の対象が本当に悪人なのか、作戦の意味はどこにあるのかと悩む主人公の姿が、国家と個人の狭間で揺れる心理を鮮明に描き出していきます。

 やがて、暗殺を遂行しても新たな指導者が次々と登場し、作戦の連鎖が止まらないことが明らかになる。味方が逆に標的にされる事態も発生し、チーム内の緊張は高まる。国家のため、家族のために行動してきた主人公であるが、次第に家族も危険にさらされることとなり、任務と個人の生活の葛藤が物語の中心となる。この反復される暗殺劇の中に、倫理的な問いや人間としての苦悩が巧みに織り込まれており、観客を引き込む力を持った作品でした。

 全体として、プロフェッショナルでない暗殺チームのドタバタと緊迫感、任務の反復による心理的圧迫、そして家族の危機と国家のための業が絡み合い、非常に引き込まれる体験をもたらしてくれる作品だと感じた。疲労感を伴うが、深く考えさせられる内容でした。

☆☆☆☆

鑑賞日: 2015/04/02  TSUTAYA TV

監督スティーヴン・スピルバーグ 
脚本トニー・クシュナー 
エリック・ロス 
出演エリック・バナ 
ダニエル・クレイグ 
シアラン・ハインズ 
マチュー・カソヴィッツ 
ハンス・ジッヒラー 
ジェフリー・ラッシュ 
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